第10章 歪な関係で私達は
「オレが傍にいんだ。オマエを訳の分からねぇ呪いなんかに殺されてたまるか。今度一人で堪えやがったら許さねぇぞ。ちゃんとオレを頼れ、バカ地味子」
「うん…ありがとう、アヤトくん」
「また泣いてんのな」
「な、泣いてないし」
「目が潤んでんぜ?」
「っ…………」
不器用だけど本当はとても優しい人。そんなアヤトくんだからこそ、私は惹かれた。
「聞いてもいい?」
「あン?」
「アヤトくんのお母さんは?今、どうされてるの?」
「…………。知らね。どっかで男たぶらかしてよろしくやってんじゃねぇの?」
「そ、そうなんだ…」
いけないこと聞いちゃったかな…?
「あー、でもひとつだけ、イイとこがあったぜ」
「え、何?」
「アイツの血」
「血?」
「オレらのハハオヤ、ヴァンパイアと魔王の混血なんだよ」
「ま、魔王!?」
「そのせいか…はぁ…血の味だけは最高だったぜ…。鼓動の音が、ちょっと変わっててさ止まってんのかと思うと、強く脈打って…不規則でさ。その心臓から流れる血は…相当ヤバかった…」
「(鼓動の音が…?)」
「そういやチチナシの血の味…アイツに似てる…っつか、違いが分かんねぇくらい…同じ味がした…」
「(ユイちゃんの血の味とアヤトくん達のお母さんの血の味が一緒って…)」
「匂いも、一緒だからな…」
「じゃあ、アヤトくんのお母さんの名前って…」
「───コーデリア。」
その名を聞いて、心臓が嫌な音を立てた。
再び血を求めて来るアヤトくんの牙を受けながら、私は母様とラファエル様の会話を思い出していた。
『コーデリアは死んだのですか?』
『あぁ。犯人は恐らくアイツらだろうな。瀕死の彼女に天使の力を求められたよ。その力を使って自分を助けろとな。』
『まさか力の半分を譲渡したのではないでしょうね?あの憎きヴァンパイアに。』
『渡すはずないだろう。彼女は魔族だぞ?それに…あの女は好かない。一度だけ顔を合わせただけなのに随分と敵視されたものだ。』
『貴女があの男の目に留まり、心酔しているのが許せないのでしょう。助けなくて正解でしたよ。魔族と関わるなんて冗談じゃない』
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