第10章 歪な関係で私達は
「オマエが泣いて叫んでも痛いくらい、血ぃ吸って、その体もっかい無理やり抱く」
「………………」
「言えよメグル。下界に興味あるってだけで天使は天界を出れねぇはずだぜ。なのに何でオマエは簡単に天界から出ることを許されたんだ?」
「それは……」
アヤトくんの疑うような眼差しが突き刺さる。噛み付かれて襲われても嫌なので、私は観念してアヤトくんに話すことを決めた。
「私が、呪われてるって言ったら、アヤトくん…信じてくれる?」
「は?呪われてる?」
「昔ね、夢の中に現れた奴が試練とか言って私に呪いを掛けたの」
「誰かって誰だよ?」
「わかんない…。でもその人は最初から私の正体に気づいてたみたい。呪いを解かないと私、死んじゃうんだって」
「……………」
「なんで…私なのかなぁ」
不安を口にする私に、アヤトくんは難しそうな顔で言った。
「呪いを解く方法はあんのか?」
「うん。特別な者からの愛を貰う事。そして永遠の愛を手に入れる事。そうすればこの忌まわしい呪いは解かれるって言ってた」
「なら…その永遠の愛っつーのを手に入れられなきゃ、オマエは呪いによって殺されるってわけか」
「私と"特別な者"に与えられた試練なんだって。下界に来たのも本当は呪いを解いてくれる相手を見つけるためなの」
「…さっき苦しそうにしてたのも、呪いのせいか?」
「…うん。前より酷くなってる。でも呪いのせいだけじゃないよ。天使である私が魔族であるアヤトくんと関わった事も関係してるの」
「あれだろ。魔族の影響を受けちまったせいだろ。オマエらにとっちゃオレらみてぇな種族は色々と身体に悪影響を及ぼすっつーからな」
「アヤトくん、知ってたの?」
「これもオヤジから聞かされた」
「そっか」
アヤトくんは私に呪いが掛けられたって知って、驚いているようにも思えた。こんな嘘みたいな話、信じてくれるのかどうかも不安だ…。
「ずっと独りで堪えてきたの。いつか壊れてしまう心臓に怯えながら…死の恐怖に震えながら…呪いを掛けられたあの日からずっと、頑張って堪えてきたんだよ」
「……………」
泣きそうになるのをグッと堪える。
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