第10章 歪な関係で私達は
貧血気味だけど教室に戻って鞄を取りに戻らなきゃと思い、身を起こそうとして、更にアヤトくんに強く抱きしめられる。
「………!」
「…いいじゃん。もう少しこうしてようぜ?」
「でも……」
「今は…離したくねぇ。それに、オマエだって体辛ぇだろ?血が足んなくなってさ。……チュッ」
「アヤトくん…」
急に甘えっ子になっちゃったみたい
…愛しいって…こんな感じなのかな?
「(不思議…天使が魔族に恋をするなんて。絶対に関わることがないと思ってたのに…まさか好きになった相手がヴァンパイアなんて…)」
肩口に顔を埋めるアヤトくんの髪に触れる。
「……………」
怒られるかなと思ったけどアヤトくんは何も言わなかった。
「(アヤトくんの髪…ちょっと固くて…でも、撫でると気持ちいい。)」
「…ナニ、母親みたいなことしてんの?」
「母親っぽい、かな?アヤトくんは、良く頭撫でてもらってたの?」
「いーや、そんな記憶はねぇな。あのオンナ、相当イカレてやがったからな。母親らしーことなんて、ひとっつもしてもらった覚えねぇぜ」
「(イカれてって。そういう感じの人…なんだ…?)」
「オマエは母親に頭撫でてもらったことあんのか…?」
「小さい頃だけど…私が眠る時はこうして優しく頭を撫でて絵本を読んでくれたの」
「……………」
「でも仕事が忙しくなると一緒に過ごせる時間が減って、寂しかったな。いつも家に独りぼっちで…母様の友達が心配して見に来てくれてたけど…やっぱり母様がいないと寂しくて…」
「オマエってすげー寂しがりだよな。遊び相手とかいねぇの?」
「…子供の頃は家から出られなかったの。まだ母様から受け継いだ天使の力を上手く制御できなかったから。今は安定してるけどね」
"それに下界に来て友達もできたよ"と笑んで言うと、アヤトくんは"ふぅん…"と言葉を返した。
「なぁ…オマエが下界に来た本当の理由って何?」
「え……?」
突然の不意打ちにギクッと微かに体が跳ねる。
「ま、前に言ったでしょ?下界に興味があったって。それ以外の理由なんて…」
「オレに嘘ついたら噛み付くからな」
「!!」
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