第10章 歪な関係で私達は
「…………!」
アヤトくんが取り出したものを見て私は驚き、怯える。
「(な、ナイフ…!?)」
「今日は牙じゃなくて、これで傷つけてやるよ…」
「………っ、じょ、冗談でしょ?アヤトくん…!」
「ククッ、いいなぁ。久しぶりのその顔…ゾクゾクするぜ」
ギラリと光るナイフで皮膚を傷付けられるのかと思うと恐怖で身が竦んだ。
「や、やだ…っ!やめて!」
「おっと、暴れんなよ」
「(やだやだ怖い…っ!)」
「下手に動くと…余計危ねぇぜ?クククッ」
「…………!」
「安心しろ…ちゃぁんと手加減はしてやるって。血が流れすぎてももったいねぇしな」
「……っ……」
「そーそー。…そのままじっとしてろよ?」
袖を捲られ、ナイフを腕に近付けるアヤトくんに私はカタカタと小刻みに体が震える。
「ひっ…!あ……っつ……!」
ナイフの刃がゆっくり引かれ、牙の時とは全然違い、熱いような、鋭い痛みが襲う。
「ククッ…ほら、出てきたぜ?真っ赤で…甘い香り…オマエの血…はぁっ…っ」
「(痛い…)」
「ククッ、ハハハ!痛いかよ?」
「あ、当たり前でしょ…っ」
「いいなぁ、その顔。苦痛に歪む、オマエの顔…。最高にそそる…。……っ……ちゅっ」
「んっ……」
「……っは、ん……はぁ……やっぱ、うめぇ……!」
「う……っ、んん……」
「…オマエさ…オレにヤラれてから…はぁっ、チュッ…ますます血ぃ濃くなったよな…」
「…………っ!」
「この満たされる感じ…たまんね…っ!……はっ、チュッ」
「(…体の力が…抜ける…)」
ドサッ
「おっと…!」
ふと体の力が抜け、倒れそうになってアヤトくんが支えてくれた。
「はぁ……メグル……」
「…アヤト…くん?」
「メグル…」
「……………」
アヤトくんは私の名前を呼び、優しく抱きしめる。
「(ズルい…。あんなひどいことした後なのに…こんなに優しく抱き締めるなんて…)」
キーンコーンカーンコーン
「(あ…下校のチャイム。胸の痛みも消えたし、そろそろ帰らないと…)」
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