第10章 歪な関係で私達は
でもアヤトくんが…
『メグル───。』
名前を囁かれる度に優しさを感じ、触れる手の温もりや唇に伝わる熱が私の心を幸せな気持ちで満たしていく。
だからアヤトくんを選んでしまった。
彼が私の呪いを解く『特別な者』だと信じて、私はアヤトくんからの愛を求める。
◇◆◇
【屋上】
「(胸が痛い…前みたいな激痛ではないけど、チクチクと突き刺さるような痛み。)」
全ての授業を終え、屋上に来ていた私はベンチに座り満月を見上げていたが、いつも来る胸の痛みに苦しさで顔を歪めた。
「はぁっ…苦しい…」
呪いの進行がどんどん速くなってる。最近は寝てる時でも胸の痛みで息苦しさが襲い、寝付けない日が続いていた。
「早く…呪いを解かないと…このままじゃ私、本当に呪いに身体を蝕まれて…」
「よお、メグル…」
「あ、アヤトくん…!」
瞬間移動で目の前に現れたアヤトくんに少し驚いた。
「探したぜ。…ま、遠くからでも匂うから、すぐ分かったけどな」
「やっぱり匂い袋の効果が薄れてるのかな…。はぁ…それとも私の血をたくさん…飲んだから…アヤトくんには利いてないとか…?」
「オレ様が知るか。それで消そうとしても匂いがプンプンすんだよ。天使特有の匂いがな。特にオマエの血は甘ったりぃから離れててもすぐに分かるぜ?」
「……………」
「つーかオマエ、なんか苦しそうじゃね?」
「…何でもないよ。ちょっと…はぁ…胸が痛いだけ…」
「ふーん…。それより今夜は満月だろ?…普段より血を求めてるせいか、鼻も利くんだよ」
「……………」
ベンチから立ち上がり、アヤトくんから離れようとする。
「ナニ警戒してんの?」
「きゃ……!」
結局掴まれてしまい、私はアヤトくんを見上げた。
「ククッ、怯えてんじゃん、オマエ。満月のオレ様は…怖いってか?」
「そんなこと…ないけど…」
「ふぅん?ククッ…」
「(う…いじめっ子の顔。)」
「メグル、最近オマエ、オレの牙にすっかり慣れちまったみてぇじゃん」
「え、いや…そんなことは…」
「痛みを通り越して、気持ちイイんだろ?…だからさ。」
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