第9章 それが狂った愛でも
【ダイニング】
「ご馳走様でした」
両手を合わせて夕食を平らげる。今日はオムライスとほうれん草とひじきのおひたしと野菜サラダとひよこ豆のスープにしてみたけど我ながらいい出来だった。
「よお、飯は終わったのかよ?」
「うん」
「…いー匂いがする。何食ってたんだ?」
「え?えっと…オムライスとほうれん草とひじきのおひたしと野菜サラダとひよこ豆のスープだよ。あとデザートにユイちゃんが作ってくれたプリン…」
「すげー食うじゃん」
「だ、だって!しっかり食べないとお腹空くし…それにちゃんと鉄分摂らないとすぐ貧血になっちゃうんだもん」
「オレ様のおかげでな」
「アヤトくんのせいで、です!」
「ククッ、っつーわけで……」
「わっ……!」
「キスさせろ」
「ちょ、ちょっと待って!キスはダメ!」
「ああ?なんで?」
食べたばかりの後にキスは流石にまず過ぎる…!
「なんでもなの!」
「チッ、好きなくせに。毎度拒みやがって」
「す、好きって…!」
「キス。好きだろ?」
「別に…好きってほどじゃ…」
「へェ…?キスする度にとろけた顔して、目まで潤ませて、頬火照らせて気持ちイイって顔するくせに?」
「な……なななっ……!」
「ククッ」
ぽぽぽっと顔を赤くした私を見てアヤトくんは可笑しそうに笑う。
「とにかく!私、食器片付けてくるから!」
「……………」
食器を持ち、私はダイニングを出た。キッチンの水道で食べた食器を洗い、きちんと拭いてから食器棚に戻す。この前、少し水滴を残したまま食器を棚に戻しちゃってレイジさんに怒られたばかりなのだ。気をつけなければ。
「(アヤトくん…さっきはお腹空いて来たのかな?)」
「やっと戻って来たか」
「あれ?アヤトくんまだいたの?」
「用がまだ済んでねぇからな」
「やっぱり血…?」
「そういうこと」
アヤトくんは私を抱き寄せ、血を吸おうとする。私はそれをじっと見つめた。
「最近オマエ、抵抗しねぇじゃん」
「抵抗してもアヤトくん、無理やり吸うでしょ。それに…別に血を吸われても死なないし」
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