第9章 それが狂った愛でも
「…なんかヤリたくなってきたな」
「っ!?ぜ、絶対にダメ…!!」
「オレとスんの嫌いじゃねぇって言ってただろうが」
「言ってないよ!?そもそも私達まだ付き合ってすらいないでしょ!!」
「だから!早くオレ様に告れってんだ!好きなくせにいつまでもメンドクセー意地張ってんじゃねぇ!」
「アヤトくんが好きって言わないと私も言わないって言ったじゃない!」
「オレから先に伝えたら、なんか負けたみたいに思うだろうが!」
「何それ!アヤトくんこそ変な意地張ってないで早く私を好きって伝えてよ…!」
「オマエが先に言え!」
「アヤトくんが先!」
バスルームで何を言い合ってるんだろうか。声が反響して、そのうち誰かが入ってくるんじゃないかとか、そんな不安は一切なくて、今はただ、アヤトくんに早く好きだと言われたい。
「それより早く流してよ…!」
「興醒めすること言うなよ」
「あ……っ、や、やめて!」
ククッと笑うアヤトくんが私に触れようとする。
「やめてって言ってるでしょっ!」
「おっと」
さすがに腹が立ち、アヤトくんを蹴ろうと足を振りかぶるが、簡単に躱されてしまう。
「きゃ……っ!」
それどころか逆に足を掴まれてしまった。
「へェ、自分から足開くなんてなかなか大胆だな、オマエ」
「やっ……!放して!」
「視覚つぶすとさぁ、その分他の感覚が敏感になるらしいじゃん。ほら。」
「……あっ!」
「ククッ、どんな感じだよ?………っ」
「やめ…て…っ」
足にキスをするアヤトくんに私はふるりと体を身震いさせる。
「ククッ、気持ちイイくせに。もっかい胸もいじってやろうか?」
「あ……っ、ま、待って!」
「待たねぇ」
「───!」
耳元で囁かれ、ドキッとする。
「(も、もう!今後一切、優しいアヤトくんなんて信用しないんだから…!)」
結局、色んな場所にキスを落とすアヤトくんの悪戯に私は泣く泣く反省するのだった。
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