第9章 それが狂った愛でも
【繁華街】
「よし、買い忘れはないよね」
…余計なものは増えちゃったけど
「色々見てたから、ちょっと遅くなっちゃったね。急ごうか、アヤトくん」
「……………」
「…アヤトくん?」
歩き出そうとするけど隣にいるアヤトくんはどこかを見たまま険しい表情を浮かべている。
「どうしたの?帰らないの?」
「…アッチのヤツ、今オマエのこと見てやがった」
「え?」
「向こうのヤツもだ」
「そう?気のせいじゃない?」
「いや、気のせいじゃねぇ。…オマエが化粧なんかしてっから見られてんじゃねぇの?」
「え……」
「人間の男って、すぐ騙されんだろ?化粧顔に」
「まさか、こんな少しつけてるだけなのに…普段だってこれより薄いの塗ってるよ?」
周囲を見渡すも、別に見られてる感じはしない。普段でもリップは薄いピンク色を塗っている。チークはしてないけど友達がしてくれたこの色は気に入ってたりする。
「メグル。こっち来い」
急に不機嫌になったアヤトくんに連れられ、私は路地裏へと引き込まれた。
ドンッ
「な……っ、ん……!」
「……………」
壁へと押しやられ、身動きが取れない私にアヤトくんは唇にキスをした。
「やっ……!人が見てる……っ、ん……っ」
「見られてんならちょうどいい。…見せつけてやろうぜ?」
「……っ……え!?」
「オマエはオレのもんなんだってさ」
道行く人が私達をチラリと見ている。その羞恥から顔を赤くし、アヤトくんの胸を押し返す。
「や、やだやだ!もう信じられないアヤトくん!!ひ、人が見てるって言ってるのに…!!」
「見られた方が興奮すんだろ、オマエは。ほら、大人しくしろ」
「っ……あ!やぁ……っ!バカァ!どこに手入れてるの……!」
ブラウスの隙間から手を忍ばせるアヤトくんに危機感を感じた私はどうすることも出来ず、焦るばかりだった。
「ほ、本当にダメ…!やめて、アヤトくん!」
「……っ……はぁ、いいじゃん。何がダメなんだよ?」
首筋に舌を這わせてアヤトくんは笑いながら言う。
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