第9章 それが狂った愛でも
【学校】
「(そういえば、レイジさんに買い物頼まれてるんだった。アヤトくん、迎えに来ちゃうよね……)」
「帰んぞ、メグル!」
「あ、アヤトくん」
「あ?」
「今日先に帰ってて。私、レイジさんに買い物頼まれてるんだ」
「そんなのチチナシに頼めばいいだろ」
「ユイちゃんも今日は用事があるんだって」
「…どこ行くんだよ?」
「繁華街の24時間ストアだよ」
「ふぅん…オレも行く」
「え?」
「あそこ、割と面白いもん売ってるからな。レイジから金預かってんだろ?」
「まぁ…余分に貰ったけど…」
「よっし、じゃあ釣りがなくなるまで使ってやろうぜ!」
「そんなことしたらレイジさんに怒られちゃうよ。ただでさえ、余計な物は買わないようにって言われてるんだから…」
溜息を漏らし、鞄の紐を肩に掛ける。
「……ん?」
「え?」
「ちょっとこっち向け」
顎を掴まれ、アヤトくんの方を向かせられる。
「ちょ、ちょっと!?何、急に…」
「…オマエ、口紅とかしてんの?」
「あ…うん。クラスの子が新作だからって塗ってくれたの。リップとチーク、綺麗な色だから落とさなかったんだよね」
「へェ……」
「な、何?そんなに見られると恥ずかしいんだけど…」
「イイ色じゃん」
「え、本当?」
「ああ。いつもより赤みが増して…血液の色が浮き出てるみてぇ。……食っちまいたくなる」
下唇を親指で撫でられ、私は慌ててアヤトくんを止める。
「だ、だめ!こんなところで……!」
「ククッ、ここじゃなきゃいーのかよ?」
「そ、そういう意味じゃ……」
「ま、いいや。……しばらくはこの色堪能すんのも悪くねぇ」
アヤトくんは笑って言った。
「…いつもみてぇなキスしたら、取れんだろ?コレ。」
「も、もう!いつまでも触ってないで!」
「何だよ、照れてんの?」
「照れてない!」
「ククッ、はいはいっと」
そうして私達は学校を出て、繁華街の24時間ストアでレイジさんから頼まれた物を買いに行った。
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