第9章 それが狂った愛でも
「やっぱり、こっちの方が開けてる。キレイな星空…」
雲がなくて良かった。今日は流れ星どれくらい見られるんだろう。
「……………」
「(下界の星空ってこんなにキレイだったなんて…凄すぎる。)」
「メグル。」
「んー?」
「……っ……」
星空に見とれているとドンッと背中を強く押され、気付いた時には湖に落ちていた。
「(な、何……!?)」
私は慌てて浮上する。
「ぷはっ!」
全身びしょ濡れだ。
「な……っ、あ、アヤトくん!?何して……っ」
「突き落としたんだよ。湖に。」
「ど、どうしてそんな…!」
「オマエがよそ見してっから悪ぃんだろ…?」
「え……?」
「オレ様が呼んだら、こっち向けっつの」
「だ、だからって何も突き落とさなくても…」
「オマエ…まぁだ分かってねぇみてーだなぁ?しばらくそこで反省してろ」
「………っ!」
しばらくって…!私泳げないよ!この湖結構深いのに!
「(ど、どうしよう…制服が水を含んで重たくなっていく…このままじゃ沈んじゃう…!)」
私が必死に考えてる間も、アヤトくんはただ見ているだけで助けようとはしない。
「ご、ごめんなさい…」
「んで?」
「………っ?」
「他に言葉はねぇのかよ?」
「ゆ、許して…!」
「『許してください。お願いします、アヤト様』だ。」
「ゆ、許してください…お願い、します…アヤト、さま…っ」
「ククッ、しょーがねぇなぁ」
「(水が冷たい…体が…)」
「あーあー。なぁに死にそうなツラしてんだよ?ククッ…」
「アヤトくん…助けて…」
「ククッ仕方ねぇな?よっと…!」
伸ばした手を掴むと、そのまま引っ張り上げられる。
「……っ……っは、はぁっ……!は……はぁ……っ」
「なあ…オマエはどうやったら勝手にうろちょろしなくなんだろーな?」
「………!」
「オレ様の前から勝手にいなくなったり、他のヤツと話したり、さ。どうしたらしなくなんだ?」
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