第8章 素直になれない天使と吸血鬼は
「……………」
「あ、アヤトくん!?」
そこにはアヤトくんが立っていた。
「ひどい!足払いかけたでしょ!?」
「……………」
「あ、アヤトくん…?」
「…何してたんだよ?」
「え?」
「シュウの部屋で、何してたんだって聞いてんだよ」
「な、何って…送って行っただけだよ」
「送って行ったぁ?」
「廊下で寝てて…そのままじゃ風邪ひいちゃいそうだったから。肩貸して、部屋に連れて行っただけ…」
「ふぅん…肩貸して、ね」
「(何でそんなに怒ってるの…?)」
「正直に吐けよ」
ぐっ
「あ…!アヤトくん…足どけて…っ!」
踏みつける力が強くて、痛みで顔を歪める。
「しょ、正直にも何も、本当に…」
「あのダル男にも血やったのか?…それともヤらせたか?」
「な……っ!そんなわけないでしょ!?だいたいヤッたの…あ、アヤトくんだけで…わ、私ビッチじゃないよ!!」
「はっ、どーだかな。オレのこと好きなくせに簡単に男の部屋に入りやがって」
「…本当だってば。信じて…」
「そうか…」
「(あ…やっと足どけてくれた。)」
「じゃあ…」
「え…!?」
「証拠見せろよ」
「きゃあっ!」
アヤトくんが私のパジャマを破る。
「クッ、相変わらず跡だらけだな」
「これはアヤトくんが…っ」
「…これじゃ、新しい跡が増えてても、分かんねぇなぁ?」
「ど、どうしてそんな意地悪言うの…?本当に全部、あ、アヤトくんの、跡だよ…」
「ふぅん…」
「新しい跡なんて…ないでしょ?」
「…ま、確かにな。しょーがねぇ。特別に信じてやってもいいぜ?」
「(良かった…)」
ホッと安堵の息を漏らした。
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