第8章 素直になれない天使と吸血鬼は
「こんなところで寝てちゃダメですよ」
「俺がどこで寝てようと、あんたには関係ない」
「(う…ちょっと怖い…。)」
でもここで怯んじゃだめ!
「実際ここで寝てるシュウさんのせいで転んじゃったので、関係なくはないと思います」
「……………」
私の言葉が気に障ったのか、シュウさんは顔をしかめた。
「お部屋はどちらですか?寝るなら自分の部屋で寝てくださいね」
「…あんたが連れてってくれんの?」
「さすがに抱えて連れて行くのは無理ですけど…よければ部屋までお付き合いするので一緒に歩きませんか?」
「歩くのダルい。」
「そ、それを言われちゃうと…」
「連れてってくれないんだったら、ここでいい。…………。」
「えぇっ!?待ってください寝ないで!!じゃあ、せめて立って、肩に掴まって下さい!そしたら、頑張ってお部屋まで連れて行きますから!」
また寝る体勢に入ったシュウさんを慌てて止める。
「…ふーん。」
「(あ、意外と素直に…)」
「じゃ、よろしく。……すぅ。」
「(お、重い…!!)」
ずしりとシュウさんの全体重がのしかかり、気を抜いたら押し潰されてしまいそうだ。
「ま、負けないんだから!」
◇◆◇
【シュウの部屋】
「はぁ、はぁ……」
やっとの思いで部屋に辿り着き、シュウさんをベッドに下ろす。息切れが半端ない。この人、本当に全体重を私に掛けた…!!
「(き、キツかった…!!)」
「…あんたも相当お節介だな」
「起きてたなら少しは自分で歩いてくれても良かったのに…」
「面倒くさい」
「め、面倒くさいって…」
「もういいだろ。俺寝るから、出て行って」
「…はい、おやすみなさい」
「……すぅ……」
「(寝るの早っ!!)」
シュウさんの邪魔にならないようにそっと部屋を抜け出した。
「シュウさんって、本当に無気力って言うか…変わってるよね」
まあ、この家に変わってない人なんていないんだけど
「さて…私も部屋に戻って…」
くるっと踵を返すと…
「わ……っ!」
ドサッ
「いったぁ…っ、もう!今度は何…!?」
また何かに躓き、振り返る。
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