第1章 PROLOGUE-はじまり-
「やんちゃな弟たちに、ここで貴女の争奪戦をされるのは耐えられませんからね。まずは貴女が届けてくれた彼女の忘れ物を預かります」
「あ、ありがとうございます…」
持っていたノートをレイジさんに渡す。これで私のミッションはトラブルも挟んだが無事に達成された。
「あ、じゃあ用も済んだので私はこれで…」
そう言って立ち上がろうとした。
「(あれ…?)」
アヤトくん達が怖いせいか、足に力を入れてソファーから立ち上がろうとしても体が震えて動けない。
「なんだ、地味子。震えてんのか?」
「んふ。やっぱりかーわいいねぇ。今すぐに食べちゃいたいよ」
「くす。泣きそうになってる。よっぽど僕らが怖いんですね」
「あ、当たり前でしょ。普段から私をいじめてくる人達をどうやって怖くないって思えばいいの?それに…なんだか今日は三人とも…いつもと違う…」
「何が違うんだよ?オレたちいつもと変わらねえじゃねえか、なあ?」
「まぁ、アヤトくんはいつもお花ちゃんに意地悪して泣かせてるし、そこは変わらないよねぇ。ボクだってカワイイお花ちゃんを愛でてるだけで、普段と何も変わらないよ?」
「でも…学校にいる時と何かが違う気が…」
「具体的に僕らのどこが違うと言うんです?」
「……………」
カナトくんにそう聞かれ、違和感の正体がハッキリしない私は黙り込んでしまう。
「ほら、茶々を入れないでください。一向に話が進まない。いい加減本当に私も怒りますよ」
「(急いでこの家を出なくちゃ!雨が強かろうが風が強かろうが、これ以上ここに長居すると大変な事に巻き込まれそうで怖い…!)」
「──ちょっと待てよ。」
「っ………!!」
「そんなに慌てて帰ることねえじゃん」
リビングから出ようとドアに向かって歩こうとすれば、突然目の前にアヤトくんが移動してきた。瞬間移動というやつだ。
「い、今…どうやって…」
「もっとオレ達と遊ぼうぜ。なあ?」
「お断りだよ。早く家に帰りたいの。そこ…退いて」
「どうせ今から走ったって電車に間に合わねーよ。つかそんなに心配ならいっそのこと、ここに住めばいいんじゃね?」
「は?」
.