第8章 素直になれない天使と吸血鬼は
「チッ…意味わかんねぇ」
するとアヤトくんは手錠を外すとそれを水路の壁に括りつける。
「え……」
「こっちが珍しく優しくしてやってんのにオマエのその態度にはうんざりだ。だからさ…オレが腹減ったら、迎えに来てやるよ」
「ま、待って…」
「大人しくココで待ってな」
「(本気で置いて行くつもりなの?)」
「ククッ」
「や、やだっ!外して!!」
「クククッ」
「お願い、アヤトくん…!」
アヤトくんの手が離れただけで私、こんなに不安で…心細くて…
「ハハハハハ…!」
高々に笑ったアヤトくんは瞬間移動でその場から消えてしまった。
「あ…アヤトくん?」
気配がしなくなり、聞こえるのは水の流れる音と天井から水路に滴り落ちる水の音だけだった。
「い、嫌っ!アヤトくん…!行かないでっ!!アヤトくん!アヤトくん!!」
そう彼の名前を呼んでどれくらいの時間が経っただろう。もう喉が枯れて声が出ない。何度呼んでも…自分の声が木霊するだけ…。
「(今頃アヤトくんは…どこにいるんだろう?もしかしてユイちゃんに血をもらいに行ってるのかな…?)」
いや…やだよ…アヤトくん…
「お願い…私を置いて行かないで…独りにしないで…傍にいてよ…」
目尻に涙が溜まるのが分かった。
「アヤトくん…離れて行かないで…」
「ようやく素直になったじゃん」
「っ………!」
後ろからギュッと抱きしめられる。
「ア……っ……」
「あーぁ、叫び過ぎだろ。ひでぇ声」
「(誰の…せい…っ)」
「ついでに泣き出すし?ん……チュッ」
「んっ……」
「ククッ、オレを求めて泣き叫ぶ声、たまらなかったぜ。オマエはさ、いつもそうやって素直にオレだけ求めてればいいんだよ。……メグル。」
「っ………」
寂しくて、悲しくて、色んな感情が重なって、私は縋るようにアヤトくんに抱き着いた。
「本当に置いて行かれたのかと思った…。アヤトくんがいないと寂しいの…だから離れないでアヤトくん…私を独りにしないで…」
「!」
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