第8章 素直になれない天使と吸血鬼は
「急に何するの!」
「オマエがオレを見ねぇからだろ!」
「だからって無理やり…!!」
「寝不足にしちゃ目が真っ赤だな?むしろオレには泣いて腫れたように見えんだけど?」
「(あの後何もせずにベッドの中でも泣いたからタオルで冷やす暇もなかった…。ていうか何で普通に会いに来れるの?)」
「何で泣いてたんだよ?」
「泣いてない…」
「あっそ。じゃあもう気にしねぇわ。オマエの目が腫れたところでオレ様には関係ねぇしな」
「(…関係ないなら放っておいてくれればいいのに。)」
「そんなことより、連れて行きたい場所があんだよ」
「…ユイちゃんを誘って行けば」
「はぁ?何でチチナシが出てくんだよ?オレが誘ってんのはオマエだろ」
「だってその方がアヤトくんだって嬉しいでしょ?私なんかよりユイちゃんを選んだんだから」
「何わけのわからねぇこと言ってやがる。オレはオマエを選んでんだ。ったく…今日はとことん機嫌悪ぃな」
「……………」
「いいから来いっつーの」
腕を掴まれて、引きずられるような形で私はアヤトくんに連れられ、何故か地下水路を通っていた。
「(家から外に出た覚えはないけど…こんなところあったっけ?)」
「城ん中。地下の水路だ」
「城……?」
「そ。うちと繋がってんだよ。あー、まあ説明メンドくせぇし。魔界とでも思っとけば?」
「魔界…?」
「ま、城ん中にいりゃキケンはねぇよ。…外に出たら…分かんねぇけどな。ククッ」
「…どうしてこんなところに?」
「イイ遊び場だろ?」
「遊び場って…何するの?」
「ここの水路、結構入り組んでて面白ぇんだぜ?ちょっとした迷路ってヤツだ」
「め、迷路…?」
「ほら、ぐずぐずしてんな。進むぞ」
「あ、ま…待って!」
一人で歩き出してしまうアヤトくんに置いて行かれないようにその手を掴む。
「…勝手に歩いて行かないで」
「さっさと着いて来ないオマエが悪ぃ。それで?天使サマは怖くてオレと手を繋ぎたいってか?」
「…家の帰り方も分からないし…はぐれたら嫌だから。でもアヤトくんが手繋ぐの嫌ならやめる…」
「……………」
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