第8章 素直になれない天使と吸血鬼は
『ねぇラファエル様。私も大きくなったら絵本の中の王子様みたいな素敵な人と出逢えるかな?』
『もちろんです。お嬢様はとてもお優しい。きっと素敵な方と巡り会えますよ』
『やったぁ!じゃあ早く大きくなる!それで私のことを好きだって言ってくれる人と幸せになるの!』
『ふふ、そうですね。お互いに好きと思える相手と幸せになるのが一番です。ゆっくりと愛を育んで未来に向かって進んでくださいな』
『愛?愛ってなぁに?』
メグルは聞き慣れない言葉に首を傾げる。
『うーん、説明が難しいですね…。でもお嬢様が大きくなられて、素敵な方と出逢えば、自ずと愛について知ると思いますよ』
『私にも分かるかな?』
『きっと。だから今は急がなくて良いのです。貴女はミカエルからの愛を一身に受けて、何事もなく無事に育ってくれたら、ミカエルも私もそれだけで幸せなのですから』
『分かった!私、たくさん食べて、たくさん修行して、絶対に素敵な人を見つけて、毎日幸せでいるね!』
『はい』
キラキラとした眼差しを向けられ、ラファエルは嬉しそうに微笑み、物語の続きを読み始めた…。
◇◆◇
【自室】
「メグル」
「……っ……」
「メグル!!」
「ん……」
微睡みの中、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「起きねぇとヤッちまうぞ?」
「っ!?」
耳元で囁かれた脅しとも取れる言葉に驚き、私はガバッと上体を起き上がらせる。
「あ…アヤトくん?」
「ククッ、よお。」
「どうしたの…?」
「ちょっと付き合えよ」
「……………」
「おい?聞いてんのか?」
「…うん、聞いてる」
「なら無視するんじゃねぇよ」
「アヤトくん…私、今日は…」
「ん?オマエ…目腫れてねぇ?」
覗き込もうとするアヤトくんから逃げるように顔を伏せた。
「寝不足だから大丈夫。気にしないで。眠れば治ると思うから…」
「何でこっち見ねぇんだよ」
「……………」
「メグル、顔上げろ」
「面倒くさい…」
「チッ、ダル男みたいなこと言ってんじゃねーよ!」
「痛ッ!!」
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