第7章 純潔を失った天使は
「……………」
泣き叫ぶメグルを逃げられないように押さえつけ、その体を無理やり抱いたアヤト。恐怖で青ざめた顔は涙で濡れ、彼女の声すら聞くことを拒絶した。
「違ぇ……オレはただ……アイツを他のヤツに奪われるのがイヤで……あんなふうに……泣かせたかったわけじゃ……」
アヤトは掌をぐっと握り締める。
「もう少しだ…。アイツが完全にオレに堕ちれば、力が手に入る。もしかすると血も更に美味くなったりしてな?」
ククッと笑いを零す。
「だから早く、オレが好きだって告白しろ…バカメグル。」
◇◆◇
【バルコニー】
「風が気持ちいい……」
アヤトくん…どこ行っちゃったんだろう?
目が覚めれば何故かアイアンメイデンの中にいた。もう慣れてしまったので驚きはしないが、隣にいたアヤトくんがいなかったのは初めてだ。
「アヤトくーん?」
とりあえずバルコニーに来てみたが、こんなところにいるんだろうか?
「……っ……」
返事がない……
「(どうしてこんなに…心細いんだろ…。)」
「メグル。」
「アヤトくん?」
顔を上げるがどこにもいない。
「コッチだ、コッチ」
「え…ドコ?」
後ろを振り返るもアヤトくんはいない。
「(こっちから声がしたと思ったのに…。)」
「ククッ」
「ドコにいるの…?」
「コッチだっつーの」
今度は別の方向から聞こえ、バッと振り向くもアヤトくんの姿はなかった。
「アヤトくん…!ドコにいるの?」
「ククッ」
「アヤトくん?」
不安げに呼ぶと返事が返って来なかった。急に心細さが増し、叫んだ。
「アヤトくん…!」
すると後ろからぎゅっと抱きしめられる。
「っ………!!」
「ココだっつーの」
「アヤト…くん…」
「ククッ、ナーニ必死になっちゃってんの?」
「(傍にいたんだ…。)」
「…そんなにオレがいなくて寂しかったってか?」
むにっと頬を優しく摘まれる。
.