第7章 純潔を失った天使は
舌の熱が肌に伝わり、小さくビクッと反応する。それを見たアヤトくんがフッと笑い、恥ずかしがる私の姿を楽しみながら、ハチミツを舐め取っていく。
「……ふう。はぁ…やっぱ、こんなんじゃ足りねぇな…」
「え?」
「ハチミツに混じって…オマエの新しい血の匂いがするぜ?」
「い、や……」
「はぁ…この肌食い破って…早く啜りてぇ……んんっ…」
「ひ……っ」
恐怖で声が漏れ、顔を引き攣らせた。肌に唇をつけながらアヤトくんは私を見上げる。
「(か、噛まれる…)」
「……………」
かぷっ
「っ!」
またあの痛みがくると思い、ぎゅっと目を瞑るが、肌に触れたのは柔らかい甘噛みだった。
「っ?…アヤトくん?」
「これなら文句ねぇだろ」
「……………」
「だから…そんなに怖がんな」
「(辛そう…)」
「くそっ…あー、まじで吸いてぇ…これ、拷問過ぎんだろ…っはぁ……」
「んっ……」
かぷっ、かぷっ、と軽く噛んで辛そうな吐息を漏らすアヤトくんに私は甘い声を出す。
「(あの日、私を無理やり抱いたこと、少しは反省してくれてるのかな…)」
アヤトくんが、私の肌に牙を立てる。ギリギリの力加減で噛んで、舐めてキスをして───。
吸血衝動を少しでも発散しようと
牙が、舌が、肌の上を暴れ回る。
乱暴されてるのに、その乱暴さが少し嬉しい。だってそれは…アヤトくんが、限界まで我慢してくれてる証拠だから。
それが……嬉しい。
やはり私は、こんなところに来て
どうにかなってしまったようだ。
◇◆◇
【バルコニー】
「……満月、か。道理で眠れねぇわけだぜ」
アヤトは一人、夜空に昇る満月を見上げる。
「あーぁ!こんな日に血我慢させられるなんてな!ま、あん時我慢できなかったのが悪ぃんだけどさ」
『いやッ……!やめて……!やめてアヤトくん……っ!!』
『やぁっ……吸わないでぇっ!あっ……んんっ!いや……ッ、いやぁ……!』
『い、痛い……っ!抜いて!やだ!ひっく……お願い……もうやめて……っ』
『あっ!いや!動いちゃだめ……!!やだやだ……ッ!あッ!んんッッ!やぁっ……もう許して……っ』
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