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【鬼滅の刃】杏の木 ♦ 煉獄 / 長編 / R18 ♦

第1章 序章


こうして見ると先ほどの身のこなしが嘘の様な、ただ普通のどこにでもいる少女にしか見えなかった。

「蛍、俺の家に剣を習いに来ないか?稽古をすればもっともっと強くなるぞ!」

びしっと指さす槇寿郎は自信満々だったが、蛍はきょとんとした後、慌てて首をぶんぶんと横にふった。

「きょ、恐縮でございます。それに私はこちらのお屋敷でのお仕事もございますゆえ…」

「そうか。それならば仕方がない。だが何もしないのはあまりにも勿体ないゆえ、俺からお館様にお話ししてみよう」

「はい、それならば…」

こくんと頷くと、杏寿郎も目を輝かせると、

「よもや!蛍が我が家へ来るのですか!?」

杏寿郎がわっしょいわっしょいと両手を万歳して喜ぶ姿に瑠火はくすりと笑いがこぼし、そんなやり取りを眺めていた耀哉も思わず笑みが浮かぶ。

「私からお父上にお話しをしてみましょう…蛍もそれで良いですね…?」

耀哉の一言に、コクコクと頷くことしかできなかったが、今から自分の立場やいろいろなものが大きく動き出しそうな予感が、蛍の胸にも溢れ、不思議な高揚感を感じずにはいられなかった。


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「呼吸が出来なければ…諦めた方が良いだろう」

槇寿郎が珍しくバツの悪そうな表情を浮かべる。

蛍が煉獄家に剣を習いに来てちょうど5年が経った日だった。
産屋敷家から隙を見ては週に2~3回ほど稽古を受けに来ていた。

冬の気配が迫り、冷たい風が槇寿郎の燃える様な髪を靡かせている。

「……不甲斐ないですね、私。ここまでしてもらったのに、結果を出せないなんて」

もう14歳になり、徐々に体は女性らしさを帯び始めていた。

「いや、単純な体術・剣技だけなら申し分ない。親馬鹿だと笑うだろうが、うちの杏寿郎はよくできた子で、あれは近年見ないほどの立派な炎柱になるに違いない」

嬉しそうに、でもどこか切なそうな瞳で、少し離れたところで剣を練習する杏寿郎を見つめていた。

「そして蛍、君は杏寿郎に勝るとも劣らない剣士だ」

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