【鬼滅の刃】杏の木 ♦ 煉獄 / 長編 / R18 ♦
第3章 鬼の血の子と稀血の柱 ※
胸に手を当て、呼吸を整える。その痛みは消えたが、これは実弥を利用した罪悪感だろうか?それとも…。
(杏寿郎…)
脳裏に一瞬、彼の姿を思い浮かべてしまう。彼の屈託なく向けられる愛情と笑顔。それを裏切った事に対する罪悪感なのかもしれない。
思いを振り切るように首をぶんぶん振り、仕事に集中しようと頬をぺちぺちと叩いた。
その時だった。
「貴様…鬼狩りか」
先程まで何ものの気配もなかった草むらに、少年が立っていた。歳の頃は12、3か、若草色の甚平が良く似合っている。
彼のその目は真っ赤に染まり、口から覗く牙が夜の闇にキラリと光った。
(まずい、まだ隊士がいない)
正面から対峙する形で半歩下がる。
「お前は臭いな、鬼の様な匂いがする」
鬼がニタァっと、口の端をあげる。
「だが、鬼狩りを食ったとなれば箔が付く」
言葉と同時にこちらに手を振り上げて飛びかかってきた少年を凝視する。感覚が研ぎ澄まされているせいか、まるでコマ送りの様だ。
(日輪刀はない、だけど…)
腰に差した脇差よりもやや短めの短刀を逆手に握る。鬼の拳がこちらに届く寸前に一歩横へ体を翻し、そのまま刀を下から振り上げた。
「何っ!?」
反射的に鬼がこちらと反対側へ地面を蹴り、すんでのところで避け、刀は右脇腹から肩へ斜めに抜けてしまった。
(逃がさない!)
そのまま一息吐く間もなく鬼の方へ距離を詰める。驚愕する鬼の顔が迫り、そのまま刀を喉元へと一閃する。
「ぐああああああ!」
鬼の叫び声に空気が震える。ギロリと真っ赤な瞳が蛍を捉え、真っ直ぐに拳が振り下ろされた。それをいとも簡単に左手で掴むと、喉元に刺さった刀をそのままに、地面に組み倒す。
まるで自分の体をどこか別のところから眺めて操作しているかのようだ。恐ろしく冷静に自分の体をコントロールできる事に、自分でも驚きを隠せない。呼吸も使わず、日輪刀もないが、まるで負ける気がしなかった。
「安心しなさい…って言葉はおかしいかしら?」
刺さった刀を抜くと、その返す動きで鬼の左腕を両断する。
一瞬真っ赤な先決が飛び散るが、すぐに傷は塞がった。しかし再生はゆっくりなようで、そこから低級な鬼と見て取れる。
「これは日輪刀じゃないし、私は鬼狩りでもない」