【鬼滅の刃】杏の木 ♦ 煉獄 / 長編 / R18 ♦
第3章 鬼の血の子と稀血の柱 ※
「ここが風柱さまのお屋敷…」
隠の衣装に身を包んでいるため、その表情はほとんど見えないが、蛍は独り言ちる。
基本的に現場支援以外では専属の柱以外のところに行くことはないため、初めての事に緊張が隠せなかった。とかく柱という存在は圧が凄い。
とはいっても、本部からの支援品を届けるだけなのだけで、午後からは現場に向かう仕事も入っていた。
(さっさと済ませて次の任務に行こう)
しかし「すみません!」と門前から屋敷へと声をあげて待っても、、誰も出てくる気配がない。大体は近くにいる隠や継子、弟子などがいて、来客を繋いでくれるはずなのだが、待てど暮らせど誰も出てくる気配がなかった。
「すみませ~ん……」
おそるおそる門をくぐり、玄関を叩いてみるがやはり反応はなかった。
(どうしよう。最悪、置いて行っても大丈夫?)
勝手に家の中に入るのはさすがに憚られるので、蛍は縁側のある庭の方へと向かった。
煉獄邸ほどではないが、一般的な家に比べると広大な庭があり、そこには恐らく鍛錬に使うのであろう、雑多なものが転がっていた。
そしてその縁側に腰掛ける男性の姿を捉える。
「不死川さま?」
恐る恐る声をかけると、上半身裸のその男は立ち上がった。
「あァ?誰だテメェは」
そんなのは隠だと見たらわかるじゃない。とは思ったものの、物凄まじい威圧感の前に口を開く勇気はなかった。
陽光に輝く銀髪と長いまつ毛、白い肌はそれだけ見れば美丈夫と言えるだろう。しかし上背と無駄のない筋肉質な体に、何より顔から体まで傷跡だらけの容貌が言葉遣いと相まって、とんでもない威圧感を放っている。
「御館様の遣いで、支給品をお届けにあがりました」
固く結ばれた風呂敷を差し出すが、彼はちっと舌打ちしただけだった。
受け取らないのであれば仕方がない。縁側にそっと音を立てずに置くと、一礼をし、その場を去ろうとした時だった。
「不死川さま、お怪我が…!」
その逞しい腕から血が滴っているのがわかった。慌てて駆け寄るが、それを腕で制される。
「うるせえなァ…さっさと帰れ」
自分で器用に包帯を巻いているが、消毒などをした形跡もなかった。
「帰りません!手当てをさせてください!」
「あァ?」