【鬼滅の刃】杏の木 ♦ 煉獄 / 長編 / R18 ♦
第2章 初めての死
彼の特徴的な、まるで一方的とも思える言い方は、それでいて何故か不快だったためしがなかった。
快活な声が心地よくすらある。
「そうね。私も頑張ってみる……」
それを聞くと、杏寿郎は心底嬉しそうに、うむ!と笑顔を見せてくれた。
「では、あとは夜が明けるまで待つだけだな!」
今度は手を差し出さなかった。にっこり笑うと有無を言わさず、蛍の手を引っ張って歩き出す。
彼に引っ張られて歩くのも悪くはなかった。
ついつい甘えてしまいたくなる己の弱さを呪い、自分の心に差す陰を隠し通せた事に安堵した事で、蛍もまたにっこりと笑うのだった。