第11章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】 1
あやと再会してから一カ月半が経った頃だった。
神様なんていない。と思った。
もしいたとしたら、何の思惑があってこんなことをするのだろう。
・・・・きっと今、職員室にいる俺の友人や知り合い達も皆そう思っただろう。
「・・・・初めまして。今日から教育実習でお世話になる、美波あやです。」
知った顔ばかりの職員室であやも困惑しているのが分かった。職員室の皆も、何と声を掛けて良いのか分からないという雰囲気だった。
「・・・美波あやさんは・・・社会科専攻だから、・・杏寿郎に指導してもらう。担当の部活も剣道部だ。3週間頼んだよ杏寿郎。」
あやを紹介する産屋敷理事長も少し困惑しているようだった。
「はい。承知しました。」
あやは・・・両親が離婚して早いうちに紫天城から美波に名字が変わってしまったらしい。大学進学で上京したそうだ。検索に引っかからないわけだ。
彼女の今の名字で検索したら剣道をはじめとして、様々なスポーツや器楽のコンクールなどでの輝かしい成績や記録がヒットした。
教育実習期間の3週間、あやは俺の授業をいくつも参観し、自分の授業の計画を立て、実際に俺の前で授業を行う。そしてHRや部活、生徒指導に一緒に行き、放課後は教員になるための指導を俺がする。・・まぁ・・ほとんど一緒にいるのだ。
挨拶の後、俺の顔をまともに見ず、あやは俯きがちに傍まで来て「先生だったんですね。・・・こんなことになってすみません。よろしくお願いします。」と小さく言った。
「いや、君も教育が専攻だったんだな。・・・こちらこそ、よろしく。」と、俺の返事も小さくなってしまった。