第24章 ※陽炎【煉獄杏寿郎】2完
宇髄はなんとも納得いかないという顔で煉獄の様子をまじまじと見た。
「確かに、もう血気術の匂いはしねぇな。煉獄の言う通りだとしたらあやは一体何だったんだ?・・・なぁ、俺達は夢でも見てたのか?」
「・・夢なら良かったかもな。」
と言いながら煉獄は腕を宇髄の方へ差し出した。手首に巻かれた薄桃色の紐を宇髄と一緒に見て、目を見合わせた。
次の日、すっかり体が治った煉獄と、消えてしまったあやと、ただの水に変わってしまったあやの血液を前に、胡蝶も首を傾げた。
◇◇◇
数か月後、俺は任務で赴いた富士の麓で偶然見つけたんだ。
煉獄が言っていた大きな神社からしばらく獣道を進んだ先の丘の上に小さな祠があるのを。
立派な杏子の木に寄り添うようにその祠は祀ってあったんだ。まだ3月初旬だったが、薄桃色の杏子の花が満開に咲き乱れていた。
杏子の木の裏側に回ると何か大きな獣に抉られた様な傷がいくつもあった。
俺は引き寄せられるように祠に近付いた。膝を付いてその祠を見る。祠の柱には見覚えがある赤い紐が結んであった。
俺は懐にたまたま入っていたキャラメルをその祠に供えた。煉獄を治してくれた礼のつもりで。
・・煉獄みたいに口に入れてやれなくて申し訳ねぇが。と。
ふいにふわっと向かい風が吹いて、小さな花弁と、甘い杏子の花の香りが俺を包んだ。
まぁ鬼が存在する位だから、それ以外の説明できないものが存在するってのもあり得る話だ。
煉獄は老若男女問わず誰にでも好かれる奴だと思っていたが・・・。
煉獄はあの日何を助けたんだろうな?
さぁ、これで俺の話は終いだ。
🔥陽炎🔥 完