第10章 ※交淡如水 【冨岡義勇】 2 完
数日後、あやは柱稽古の合間にしのぶから包帯や傷薬を義勇の屋敷まで持って行って欲しいと言われた。竈門隊士が稽古をしてもらっており、大量に消費するからと。
あやは自分の稽古の後で疲れていたが、しばらく義勇とゆっくり会っていなかったので嬉しかった。
蝶屋敷で残務を済ませて、義勇の屋敷に着いた頃には宵闇が辺りを包み込もうとしていた。
竈門隊士はもう帰った後だった。
「お邪魔します」
「来たか。すまないな。」
あやは夕飯を持って来ていたので、一緒に食べた。
夕飯を食べた後、稽古の事や最近の事を少し話した。
お茶を入れようとあやが動いた時に、ふとあやの指先と義勇の指先が触れた。
あやも義勇も触れた指先に視線を送り、顔を見合わせる。指先の暖かさを感じながら、ほんの数秒視線を絡めただけなのに、頭の奥がぐらりぐらりと揺れ熱を持ち始める。
どちらからともなく、2人の顔は近づき、ちゅっと唇を触れ合わせる。一度顔を離すが、また目が合うと2人とも「ふっ」と笑い、ちゅっ、ちゅっ、ちゅ・・と角度を変えて何回も口づけ。
顔を離すと、義勇があやの体をぎゅっと抱きしめた。
「あや、お前は本当に他に好いた男はいないのか?」
「・・・義勇殿。怒りますよ。」
あやはどんな顔で義勇は言ってるのか見てやろうと思ったが、強く抱きしめられていて体を離すことは難しかった。
「・・・このまま続けて良いのか?」
「・・・では、・・・義勇殿は・・・・私をどう思ってらっしゃるんですか?」
「・・・。」
「・・・・。」
ここでまさかの沈黙。そして義勇はやっと口を開く。
「・・・・好きだ。」
「・・・長かった間は何ですか?」
あやは小さく溜息をつき、ほっとした顔で微笑むと腕を義勇の背中に回す。
「・・・今の戦況からいうと、もしかしたらあやと俺が会えるのはこれが最後かもしれない。」
「・・・・。」
あやは え?と大きく目を開き、背中に回した腕に力を込める。