第10章 ※交淡如水 【冨岡義勇】 2 完
担当10カ月目の主な出来事
柱稽古があった。
あやも参加したが、予想以上につらく、あまり強くないのでどの柱の所もなかなか許可を貰えなかった。
義勇は時々、顔を見に来てくれた。
毎回、ぎゅっと抱きしめてくれて、
「頼むから自分の身が守れる位は強くなってくれ。」と言う。
この頃になるとあやも義勇の性格に慣れて来たので、毎回、口付けの挑戦をする。
抱きしめられた後に、顔を上げて目を合わせ、少し微笑んで目を閉じる。その後義勇はどうするか。
1回目は義勇に全く意図に気づいてもらえず、「寝るな」と言われたので、あやは少し困った顔をして「口づけを・・・」というとちゅっとしてくれた。
あやが目を開けて嬉しくて笑っていたら、義勇も少し笑って目を逸らした。
2回目は、顔をあげたらすぐにちゅっと口づけをくれた。あやは、目を開けたままだったので、義勇の綺麗な瞳がよく見えた。
睫毛が長い事に驚き、じっと見ていると、義勇は赤くなって「もう終わりだ」と顔を掌でぐいっと押して体を離した。
3回目 義勇もだんだんあやの挑戦に気づいてきたようで、抱きしめるのも渋ってきた。でも、悲しそうな顔をすると「仕方ない」とぎゅっと抱きしめる。
そんな義勇が可愛くてあやが満面の笑顔で顔を見ていたら、「そんなに見るな。穴が開く。」と目を掌で隠し、ちゅっちゅと二回も口づけを落とした。
4回目 この日あやはとても疲れていたし、自分があまりに弱くて落ち込んでいた。自分はちゃんと役に立てるのか心配になっていた。義勇がいつものようにぎゅっと抱きしめたけど、あやはなかなか顔が上げられずにいた。「いつもの能天気な顔はどうした?」と訊かれ、苦い顔で見上げたらプッと笑われて横を向かれた。
あやは腹が立ったので、義勇が口づけをしてきた時に義勇の唇をぺろりと舐めてみた。今度は義勇が眉根を寄せて怒った顔であやのわき腹に指を立てて掴んでくる。
あやが「ぎゃ」と叫ぶと、義勇は自分の唇に人差し指をあてて「煩い」と言った後、少しだけ笑った顔でちゅと口づけをした。
相変わらず、義勇は「好き」とは言ってくれないけど、けっこう打ち解けてきたと思う。