第9章 交淡如水 【冨岡義勇】 1
朝食後、あやは義勇に薬を飲ませると傷の包帯を替え、着替えが済むと蝶屋敷へ戻る。
柱の方々は丈夫な人が多く、傷もすぐに癒える。
義勇の屋敷へも最初の2日は日に3回程通ったが、3日目には昼間に一回だけ。4日目になると自分から治療を受けに蝶屋敷へ来た。
しのぶから、屋敷へ勝手に帰った事への嫌味を言われながら、診察を受けた帰り際にあやを訪ねた。
「あや。世話になったな。」
「いいえ。私の仕事です。義勇殿の担当をさせて頂きますので、今後もよろしくお願いいたします。」
「そうか。」
一瞬いつもの無表情が少し柔らかくなった。
「屋敷の周りに殺気を出さないでいただけるとありがたいです。」
「そうだな。分かった。」
義勇からの謎行動と「仄かな好意」・・多分。
担当2カ月目の主な出来事
あやは伊黒から治療の指名があったので行っていた。あやが担当替えになった後、なかなか後任が決まらなかったので、向こうから指名してきたのだ。
伊黒の所では、嫌味に対して変にオドオドするのではなく、遠慮せずに鏑丸と遊んだり、弱いと言われたら「では教えてください」と堂々と剣の指南をお願いすると、比較的機嫌がよくなってくる。
そして、頃合いを見計らって、甘露寺殿と行けるような甘味処や食事処の話題を出せばとても優しい顔を見せてくれる。
もたもたするのは嫌いな方なので、さっさと治療を済ませる。また呼ぶぞと言われながら、伊黒の屋敷を後にする。
その日はあやが伊黒邸に赴いた後に、義勇も治療が必要になったらしく、他の隊士が代わりに治療に行ったと聞いた。
次の日
朝から義勇が蝶屋敷へ来ていた。腕が折れているらしい。しのぶに見せた後、あやの所へ来た。
「昨日はどうした?他の隊士だったから心配したぞ。」
「小芭内殿の所へ行っていました。ご心配をおかけしてすみませんでした。」
「・・・そうか。無事ならいい。」
「義勇殿、腕が良くなるまで、しばらくの間お屋敷へお食事を御持ちしますよ。」
「そうか。分かった。」
きっとこれは義勇からの二回目の「好意」と多分・・少し「ヤキモチ」あやは、この義勇の行動は可愛いと思っていた。