第7章 ※赴湯蹈火 【煉獄杏寿郎】2
杏寿郎によって暴かれた心をまた奥底に押し込むまで一週間程客を取るのが辛かった。客の中では比較的気に入っている天元に対しても、触られると怖気がついて困った。
天元の方もいろ葉の様子が少しおかしいことに気づいた。いつも怖い位に整った横顔だったが、この日は少しだけ幼く見えた。この前の涙もそうだが、自分に少し心を許して素を出してくれているのかと思い、本当のいろ葉が見えたようで愛おしさが増した。体を抱き寄せて優しく囁く。
「いろ葉。・・・気分が乗らなきゃ何もしなくていいからよ。傍にいてくれ。」
優しい男だ。あやの変化にすぐ気づく。さすがにこの若さで一代で豪商になっただけあるな。と思いながらあやは甘えてみせる。
「天元様。・・抱いて下さらないのですか?楽しみにしていたのに。」
あやは天元の顔を見て、微笑みながらさらりさらりと綺麗な銀の髪を指で弄ぶ。天元もあやを見ながら、指で頬を優しく撫でる。
「いろ葉。お前を身請けさせてくれ。船酔いしなけりゃ日の本各地の買い付けにも連れてってやる。他の妻達もいい奴らだ。毎日三人で楽しくやってる。お前もそこに入ればいい。俺と来れば楽しいぜ。」
あやは、遊女の自分の未来などには期待していないが、ここから連れ出してくれるならそれも悪くないなと思いながら応える。どこまで本気か分からないが。
「天元様のお顔がいつでも見られるなんて幸せですね。」
「・・俺もお前の顔が毎日見られるのは幸せだ。・・・決まりだな。」
あやは返事の替わりに天元の唇に自分の唇を重ねる。天元の手はあやの蹴出しの隙間に入っていく。「あ・・っ」とすぐにあやの甘い吐息が漏れ始める。