第3章 燎原之火 【煉獄杏寿郎】1
「で、続きだ。・・・その日から授業中やHRで紫天城とよく目が合うようになった。見ない様に気を付けているのにだ。・・・宇髄。この感情は、やはり・・恋か?」
「・・・いいや。まだその芽が出るかどうかってところじゃねぇか?まだ今の感情には名前は付かねぇよ。お前がこれからどうしたいかによるんじゃねぇの?出始めている芽に水をやんなきゃ勝手に枯れる。」
「・・・ならば枯らすまでだな。俺から何かすることは無い。3月になったら卒業だ。」
「ま、そーだな。何かあったら相談しろよ。」
「・・宇髄。面白がってるだろう?」
「いや、堅物のお前が、そんな状態になっていることに少し驚いている。」
「俺もだ。生徒をそんな目で見るなんて教師失格だと思っていたからな。」
数日後。
俺は自分のクラスで日本史の授業をしていた。
いつものように綺麗に掃除された深緑色の黒板に、白いチョークでその日の学習内容を書いていく。
中盤、資料を配布した時、人差し指の指先に少し痛みが走った。
見ると、うっすらと血の滲んだ指先と、そこに斜めに走る細い筋。別段大したことは無いので、親指とこすり合わせてそのままにし、また授業に戻る。
生徒に質問を投げかけ、考えさせている間に机間指導して学習内容が理解できているかを見て回る。
紫天城の席は教室の窓側の一番後ろ。
いつも最後にその列を見ながらまた教卓へ戻る。