第3章 燎原之火 【煉獄杏寿郎】1
「そして、俺にこう言った。
『私ね、煉獄せんせいの日本史の授業が好き。』
『私ね、煉獄せんせいの綺麗な字が好き』
『私、・・煉獄せんせいの事が好き。声も、笑顔も、全部』
と、さっきみたいな少し大人びた切ない笑顔で、俺をじっと見ながら。」
また、俺は歩き出し、続きを話す。
宇髄は「そういうことか」と呟いて、小さく溜息をつきながらついて来る。
「別に、そんなに珍しいことではないだろう?生徒から告白されるなんて。いつものようににっこり笑って、『ありがとう。そう思って貰えて嬉しいぞ。』で済むことなんだ。」
「が・・・。よもや、俺はその言葉に心臓を鷲掴みにされたんだ。一瞬言葉が出ずに止まってしまった。なんとか笑顔を作り、「ありがとう」とだけ言うのが精一杯だった。」
「その後は特に会話をすることなく、紫天城は黒板の掃除が終わると、『さようなら』と笑顔で言って帰って行ったんだ。・・正確には、会話どころか気の利いた言葉が出なかった。俺はまともに顔も見られなかった。耳に心臓があるんじゃないかという位、自分の鼓動が聞こえたぞ。」
何とも言えない表情の宇髄が俺の方を見たので、「困ったな」と笑って見せる。
「・・・家、行かない方が良かったか?」
「いや、今日のあの状況だと、行く以外の選択肢は無いだろう。持ち切れないほどの荷物だったし、一人暮らしなら、家庭訪問もしておかなければならないだろうしな。・・・宇髄。紫天城に俺の番号を教えてやってくれ。何かあればどうせ担任の俺に連絡が来る。」
「あぁ、分かった。」