第3章 燎原之火 【煉獄杏寿郎】1
宇髄は通路に出て歩き始めると直ぐに口を開く。
「煉獄、・・・お前、紫天城と何かあった?全然喋んねーじゃん。・・・勝手に荷物運ぶの決めて怒ってる?」
いつもと様子が違う俺を心配してくれている。
俺はどこから話そうかと少し考えてから答える。
「いや、怒ってない。」
「・・・宇髄、ちょっと聞いてくれ。」
「なんだよ?」
「・・・その・・。黒板が・・・綺麗だったんだ。」
「は?脈絡ねーな。」
もう少し聞け、と俺は歩きながら続ける。
「俺のクラスの俺の授業の時だけ、黒板に何の汚れもなくいつも綺麗で、チョークまで新しいものが揃えて置いてあるんだ。」
「最初はそんなことにすら気が付かなかった。気付いた後も、日直がやってくれていると思ってたんだ。」
宇髄は俺の顔を時折見ながら、静かに聞いてくれている。
「つい、2週間ほど前の事だ。放課後、教室で日誌の整理をしていたら、紫天城が友達と残っていた。特に気にも留めずに俺は作業をしていたんだが、紫天城だけが教室に残り、濡らした雑巾で黒板を掃除し始めたんだ。」
「『日直か、ご苦労様。』と声を掛けると、『違う。』と言い、『明日の1限が日本史だから』と。俺はこれまでの事が繋がって、『いつも紫天城が黒板を綺麗にしてくれていたのか、ありがとう。』と言った。」
「そして、俺は何も考えずに尋ねてしまったんだ。『どうして俺の授業の時だけそうするんだ?』と、そうしたら、紫天城はちょっと何かを考えた後、動きを止めて俺に向き直った。」
そこまで言うと、俺は立ち止まり宇髄を見た。つられて宇髄も立ち止まってこちらを見る。