第23章 ※陽炎【煉獄杏寿郎】1
そして三日たった。
辺りが夕闇に包まれた頃に宇髄が約束通り訪ねて来た。またお茶を出しに来たあやを見てあからさまにぎょっとした。流石の煉獄も困った顔で宇髄を見た。
大きくなっているのだ。確実に。大きくというのは少し語弊がある。成長していた。少女というよりも女性と言った方が良いような15歳位の年恰好に。
前回宇髄が訪れた時と同じようにお茶と茶菓子を出したら、煉獄から茶菓子を半分口に入れてもらい、残りの半分を煉獄の口に入れて見つめ合って微笑むと、退室した。
「・・・・煉獄。」
「宇髄。・・・・どう思う?勿論もう千の着物は体に合わない。胡蝶から借りてきているんだ。それも明日には危うい。」
「どうって・・・なんだありゃ?俺が見るまでも無く確実に成長してるじゃねぇか。それに、お前達、なんか三日前の兄妹みたいな雰囲気じゃなくて、新婚夫婦みたいだったぞ。」
「血気術か?」
「いや・・・そうじゃねぇのはお前も分かっているんだろ?鬼とはやっぱり違う。」
「それがな。昨日胡蝶の所にあやを連れて血液検査の結果を聞きに行ったんだ。血液に異常は無いらしい。本当にただの人間ならこう成長が早い事の説明がつかん。」
「う~ん。」
「宇髄、俺の方はどうだ?何か様子が変わっているか?」
「・・・なんだかお前の方が血気術の匂いがするぜ。・・・顔色が悪ぃよ。この前よりもずっと。」
「顔色は、内臓への外傷らしい。俺には珍しく全体的に怪我の治りが遅いそうだ。まぁ、じきに戻るさ。確かに胡蝶も俺の方にも妙な気配がすると言っていたな。・・・それ以外は何かないか?」
宇髄はその聞き方に煉獄に何か思い当たることがあると察して聞き返した。
「煉獄、何かあるんだろ?」
煉獄は引き結んだ口はそのままに、宇髄と目を合わせた。一つ深い呼吸をしてから口を開く。心なしか頬が赤くなっている。
「その・・・な・・。昨晩あやと目合ってしまった。」
「はぁ?何やってんだよ。」
宇髄は切れ長の大きな目を見開き、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で煉獄の顔を覗き込んだ。煉獄はすっと視線を逸らして庭で千寿郎と一緒に掃き掃除をしているあやを見た。
「夜中目を覚ましたらな、俺の上にあやが乗っていた。」