第23章 ※陽炎【煉獄杏寿郎】1
煉獄はあや達を襲っていた鬼と戦った時に体の右半身に攻撃を喰らって負傷したのだ。右の肩とわき腹、そしてあやが口づけをした右手の小指に。肩もあばらも小指も骨が折れていた。
それ以外にも腕にも薄くひびが入っているかもという事と、もしかしたら内臓も損傷している可能性があるというのが胡蝶の見立てだった。
小指は腫れているし、肩とわき腹には包帯がしてあるので何かの拍子に包帯が見えた為、あやはそこに手を当ててくれているのだろうと予想していた。
あやは煉獄の屋敷に保護されてから毎晩煉獄と一緒に眠っていた。
日が落ちて暗くなってくると煉獄の傍に寄り添って離れなくなるのだ。煉獄があやにその理由を尋ねても「傍にいたいのか?」という問いにだけ頷いて後の問いには返答せずにじっと煉獄の瞳を見つめるだけだった。
煉獄はまだ幼いとはいえ未婚の女子と床を共にするのは良くないと思っていたが、家族を目の前で殺されたあやの心中を慮って無理に離すこともできず、仕方なしに懐に入れて幼子にする様に背中を抱いてとんとんと叩いて寝かしつけてやっていた。あやは必ず煉獄の折れた肩かわき腹に手を添えて眠った。