第23章 ※陽炎【煉獄杏寿郎】1
煉獄はそう言うと宇髄の方へ向き直った。宇髄の方もまだ何かあると察して煉獄の顔を見る。
「・・・他にも俺にして欲しいことがあるんだろ?」
「そうだ。三日ほど経ったらまた彼女を見に来て欲しいんだ。毎日見ていると大きさの変化が分かりにくい。」
煉獄はそこまで言うと、一つ大きく息を吐く。少し困った様な顔になって続けた。
「後、俺の様子もだ。すでに何かの術にかかっている可能性がある。上手く言えんが若干の違和感があるんだ。」
「・・・・わかった。三日後に来る。それまでに何かあったら鴉を飛ばしてくれ。駆けつける。」
「あぁ。すまない。助かる。」
いつものからりとした煉獄の笑顔を見て、宇髄は少し苦い顔をした。口を開いて何かを言おうとしたが、一度閉じる。それを不思議そうに見る煉獄に向かって一度口を引き結んだ後、意を決したように口を開く。
「・・・・煉獄、お前、怪我してるだろ?無理すんなよ。顔色が少し悪いぜ。」
「ははは。流石だな君は。なに、あばらと鎖骨が折れただけだ。じきに治る。」
「・・それと・・煉獄、もしもあの子が鬼だったら連絡しろ。俺が首を切ってやるから。」
「宇髄、大丈夫だ。それくらいできる。」
「馬鹿。お前自分があやにどんな優しい顔して喋ってるか分かってねぇんだろ?・・・いい。俺が切ってやるから連絡しろ。」
「・・・何から何まですまないな。」
まだ庭で千寿郎と遊んでいるあやを一瞥すると、宇髄は帰って行った。
煉獄は門をくぐる宇髄の背中を見ながらやっぱり宇髄を呼んで正解だったと思っていた。宇髄が心配する程には自分は平常でないと思い知らされた。
あやが屋敷に来てからどうも頭に薄く靄が掛かっている様な変な感じが付きまとっていたのだ。