第3章 燎原之火 【煉獄杏寿郎】1
他にも少しだけ買い足し、あやのマンションへ行った。駅からは少し遠く、大きくはない建物だが、入り口はオートロックだった。
荷物を玄関先に置いていると、「どうぞ。」と中に招き入れてくれた。
「ここで帰るぜ。」
宇髄が言うが、あやが少し悲しそうな顔で、
「せめてお礼にお茶を入れさせてください。」
と言うので、俺たちは少し上がらせてもらうことにした。
「おぉ。あまーい香りの紅茶だな。イチゴか?」
「宇髄先生、正解。この前買っていい香りだったから、誰かと一緒に飲みたかったんです。」
良かったーと言いながら、あやは嬉しそうに紅茶を飲む。
「紫天城、可愛いらしーことすんなー。・・お前、一人暮らしだからって、そんな感じであんまり彼氏とか連れ込むんじゃねーぞ。」
「心配してくれてありがとうございます。でも、大丈夫だよ。彼氏いない。」
と微笑みながら宇髄に答え、チラっと俺を見てキッチンの方へ行く。
「はい、先生達。アイスをどーぞ。」
「煉獄せんせいはお芋味。宇髄先生は・・、大人の味のラムレーズン?」
と、あやは俺たちの手にアイスとスプーンを乗せ、自分もさつまいもアイスを食べ始める。
「いいセンスしてんな。」
「ふふふ。そうでしょう?」
アイスを食べ終わると、俺と宇髄は目を合わせて席を立つ。
「じゃあ。帰るぜ。戸締りちゃんとしろよ。あ、後で煉獄先生の番号送っとくから登録しとけよ。」
「はい。宇髄先生。色々と有難うございます。」
と深々と頭を下げる。
「煉獄せんせい・・・。ありがとうございました。」
と俺と目を合わせると一瞬悲しそうな顔をしてから、また、ふわりと微笑んで頭を下げる。あぁ。ご馳走様。また月曜に学校で。と返して部屋を後にした。