第22章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】5 完
杏寿郎は少し真面目な顔になって、シャツとTシャツ、スラックスを脱ぐと私の足を掬って抱え上げ、ベッドまで移動する。
「冗談だとしたら面白くないぞ?」
「・・・本当よ。・・・ねぇ杏寿郎さん。あの日の数日後、祖父が殺されたの。」
私をベッドに寝かせると覆いかぶさる。
「鬼舞辻組か?」
「・・・堂磨だと思う。」
「・・・それは気の毒に。あや、辛かったな。」
「多分嗅ぎまわっていることへの警告と、この前の白いバン事件と暗殺失敗の仕返し。でもそのおかげで決心がついた。祖父の事でバタバタしてたらあなたに連絡するのが遅くなっちゃった。」
私は腕を伸ばして杏寿郎のハーフアップの髪の結び目を取る。少し癖の付いた髪がパサリと頬に落ちる。その髪を両手で頬から頭に沿って指先で梳くと、かき上げた髪の隙間からいつもの杏寿郎の甘い香りがした。
「ね。杏寿郎さん、ショーツを脱がせて。」
「・・・いいのか?もう途中で辞められないぞ?」
私がにっこり笑うのを見て、ストッキングとショーツに手を掛ける。少しずらして手を止める。
ショーツの下に見えたものに驚く。
「あや、墨を入れたのか?」
「私も覚悟をしました。」
「綺麗な炎だ。」
「あなたの炎。」
「・・驚いた。本当に辞めたんだな。」
「そう。私嘘は嫌いなの。」
杏寿郎は私の言葉に少し首を傾げて笑ったが、すぐに視線を下げてもう一度見る。そして私の左の腰に手を伸ばす。腰骨の辺りから腰に向かって燃える炎の刺青を指先で辿った。
左側にだけ掌より少し大きな炎の刺青。
「どうしてここに?」
「杏寿郎さんが、いつもセックスするときにここを持つから。・・・熱いの。」
私の腰を見ていた杏寿郎がゆっくり顔を上げて私と目を合わせる。熱を持った真っ赤に燃える虎の瞳。私も負けずにその瞳を微笑みながら睨む。そして両手を軽く広げて微笑む。
「どうぞ。もうあなたの物よ。」
「俺の命を懸けて大切にすると誓おう。」
「・・今日は眠れんぞ?」
「ふふふ。それの覚悟もできてる。」
虎がゆっくりと私の唇に口づけを落として唇をペロと舐める。いつもこれが始まりの合図。