第22章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】5 完
直ぐに杏寿郎は来た。
私の傍へ近付きながら言う。
「・・警視殿が俺に何の用だ?忘れ物か?・・あぁ、三週間振りだな。」
「ご無沙汰していました。杏寿郎さんお元気そう。」
杏寿郎は少し困った顔で私の前に立つ。
「本当にそう見えるか?・・・・用がないなら申し訳ないがお引き取り願おう。俺はまだ君を失った心の傷が癒えていないんだ。それに・・撃たれるかもしれないとは考えなかったか?」
「勿論考えた。その覚悟をして来ました。」
私は杏寿郎の顔を見上げて微笑む。
「殺されるならあなたが良い。愛した人の顔を見ながら死ぬのも幸せ。」
杏寿郎は私の顔を覗き込むと、「俺は君のその顔に弱いんだ」と言いながら私の腰に腕を回す。
「殺される可能性もあるけど、それでもあなたに会いたかったって用ではダメ?」
私も杏寿郎の襟元に手を伸ばして金の髪を指先で弄ぶ。
「・・・どうした?あや。俺との夜が忘れられなかったか?」
私の顔を覗き込みながら少し意地悪く笑う。私は杏寿郎の首筋に腕を回して顔を引き寄せる。
私の目を見ていた杏寿郎はふっと笑うとゆっくりと唇を重ねてきた。そしていつものように耳の後ろや首筋にキスを始め、「本当に始めてしまうぞ?」と囁く。
私は左手の薬指に嵌めた指輪を見ながら、「返事もまだだったから。」と杏寿郎の唇や喉仏、顎先にキスをする。そしてネクタイの結び目に指を入れて緩めると、一つ一つシャツの釦を外していく。
「良い返事以外は聞かないと言っただろう?」
杏寿郎も私のブラウスの釦を外して胸の谷間にキスをしてスカートの後ろのホックを外す。
スカートが足元に落ちた。
「良い返事・・・しにきたんだけど?」
「・・警視殿。ご冗談を。警察官は反社会的勢力の人間とは結婚できないのをご存じないのか?」
「もう、警視じゃないもの。」
「ん?今回のお手柄でもっと御出世されたか?」
「いいえ、辞めたの。」
杏寿郎はピタと手を止めて私を見る。
私は杏寿郎の瞳を見て微笑むと目を合わせたまま、スラックスの釦を外す。中に手を伸ばしてもうすでに芯を持ち始めたペニスを下着越しに扱く。
「・・・なぜ?」
「・・・さっき杏寿郎さんが言った通り。刑事のままじゃあなたと結婚できないもの。あなたにプロポーズされる少し前から辞めることは考えていた。」