第22章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】5 完
約束の時間になって、杏寿郎が迎えに来る。車に乗り込むと杏寿郎はすぐに私の手をぎゅっと握ってきた。当たり障りのない会話をしていたらレストランに着いた。・・・車で撃たれることが一番心配だったが杏寿郎はしなかった。
杏寿郎は私の顔は見ずにずっと窓の外を見ていた。
2人で穏やかに会話をしながら食事をした。前回来た時の思い出話や、次に見たい歌舞伎の演目などを杏寿郎は話していた。ふと私の祖父の事を聞いてきた。杏寿郎のお陰で家は少しリフォームできて祖父の生活が楽になっているらしいと言うと本当に嬉しそうに笑った。
食事もそろそろ終わる頃、杏寿郎は私の手の上に自分の手を重ねた。大きく深呼吸して目を合わせると少し悲しそうに笑う。
「あや、君、俺に隠していることがあるだろう?」
私も杏寿郎の目を見ながらゆっくり息を吸って、にっこり笑う。
「・・・杏寿郎さん。その話は別の場所でしましょう。」
・・あぁ、ごめんなさい。
私は重ねられた杏寿郎の手の下から素早く手を抜く。ポケットに入っていたスマホを持って急いで後藤に電話をする。
杏寿郎は驚いて「待て、どこにかけるんだ?」と私の手首を掴む。
・・・よし、手首を掴んだ。・・・それを待っていた。
私は反対のポケットから手錠を出して杏寿郎の手首に掛ける。
「・・・暴行の容疑で現行犯逮捕します。ご同行願います。」
「・・・・は?」
近くで待機していた後藤に杏寿郎を引き渡すと、パトカーに乗せられて連れて行かれた。
私を一度ちらと見たが、その後は特に慌てる様子も無く、堂々としていた。
私も別の車で警視庁に向かう。