第22章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】5 完
俺は一緒に住むようになってから何度も考えていた事を決心する。
この先もずっと俺の傍にいて欲しい。
あやの事を考えると柄にもなく何とも言えないふわふわした気持ちで胸がいっぱいになる。そしてその気持ちは増す一方だ。
俺は、ベッドの脇にあるチェストの抽斗に手を伸ばす。あやの滑らかな背中から口は離したくないので、指先で抽斗の中を探る。目当ての物のふたを開けて、中の物を出す。
くすぐったそうに身を捩るあやを逃がさない様に抱きしめて、あやの左手の薬指にそれをはめた。あやがその指に視線を向ける。目を丸くして指を眺めているあやをぎゅっと抱きしめて耳元で囁く。
「あや、俺と結婚してくれ。」
「・・・・杏寿郎さん。」
あやは驚いて背中の俺の顔を覗き込む。俺は笑いながら頬にキスをして駄々っ子みたいに言う。
「良い返事以外は聞かんぞ。」
あやは指輪を嵌めた方の手で俺の頬と髪を触りながら俺の顔を覗き込むと、俺の好きな笑顔を向けてきた。
「随分子供みたいな事を言う虎ですね。・・・良い返事がしたいから、少しだけ待ってくれない?」
「・・・良い返事の為なら待とう。」
あやはまた視線を指輪に向けて少し微笑むと俺を見て「杏寿郎さん。ありがとう。」と言いながら体の向きを変えた。そして俺の首筋に抱き付く。俺もあやの身体を抱きしめて、キスをする。そしてまたあやの身体をしつこいくらいに愛して、瞳を黒く潤ませていく。
そして数日後
晴天の霹靂とはこのことだ。
「杏寿郎さん、ちょっと気になる情報が入っています。」
「・・・・あぁ。俺も気になることを小耳にはさんだ。」
「・・・・」
「いいぞ。高橋、俺に気を使わなくていい。報告してくれ。」
「先日、港に上がった若い女の遺体ですが、3か月ほど前から鬼舞辻組の所に潜入していた警察のスパイだったようです。ちょっと気になったので警視庁のサーバーに少しだけ入りまして・・・。」
「・・・・あぁ。高橋。言いたいことは分かるぞ。俺の所にも約3カ月前に現れた人がいる。」
俺と高橋は目を合わせてしばらく沈黙する。
・・・・この会話の結末がとても後味の悪いものになるからだ。