第21章 炎虎 【煉獄杏寿郎】4
私は杏寿郎に助け出されてからずっと体が震えていたが、少し治まってきたので、杏寿郎に勧められて風呂を借りた。杏寿郎のTシャツとハーフパンツは大きかったが、彼の香りがして安心できた。
私がソファに座っていると杏寿郎はグラスにアイスティーを入れて持って来てくれた。テーブルにそれを置いて私の横に座ると杏寿郎はまたぎゅっと抱き締めた。
小さく息を吐くと体を離して私の手を取る。瞳を見つめる。眉尻を下げて、困った顔で。
「あや、俺のせいでこんなことになって申し訳ないが、今のままの生活を続けるなら命の保証はできない。君のアパートにももう一人で戻らない方が良い。」
「・・・。」
そう言うと杏寿郎は目を伏せて口を結んで、少し黙り込んだ。その沈黙は続く話を言い淀んでいると分かっているので、待つ。
杏寿郎はしばらくの沈黙の後、伏せた目を上げる。私の目を見つめると大きく息を吸って吐く。そして握った手に力を込める。やはりまだ困った顔で。
「・・・もう俺と関わりを持たない方が良い。少し遠い所になってしまうが、俺が君の新しい住まいと仕事を見つける。そちらに引っ越してくれ。君の平穏な暮らしを奪ってすまない。」
私は杏寿郎の手を握り返す。
杏寿郎の目を見ながらゆっくり首を振る。
「私は覚悟はできたと言いました。あなたが嫌でなければあなたの傍にいたい。」
杏寿郎は少し動きを止める。瞳の炎が揺れる。
そして、眉尻を少し下げて微笑むと、私の顔を真っ直ぐに見た。静かな声で言う。
「・・・・わかった。では、この家に来てくれ。俺の傍にいて欲しい。見える所にいてくれれば今回みたいなことが起きない様にする。俺がいない時は信頼できる部下にいてもらう。君の自由は少なくなるが、もう怖い思いはさせない。」
そしてまた抱きしめられる。
・・・・遠くに行くなんてとんでもない。
いよいよこれからだ。
一緒に住むとなると後藤と連絡が取りづらくなるが、仕方ない。