第21章 炎虎 【煉獄杏寿郎】4
杏寿郎が私の顔を覗き込む。初めて見る余裕の無い顔。
「あや、あや、大丈夫か。あぁ良かった。ちょっと痛いかもしれないが待ってくれ。ガムテープを外すぞ。」
私がこくこくと頷くのを待ってから、口から後ろ頭までグルグルと巻かれたガムテープを切り取りながら少しずつ外してくれる。外した私の顔を見て悲しそうな顔をする。
「あぁ・・・。酷い。痛そうだ。殴られたのか?頬も赤い。・・・俺のせいですまない。」
そう言いながら私の身体を苦しい位強く抱きしめた。
「杏寿郎さん。・・・怖かった。」
私もぎゅっと抱き付いてほっとしたら涙が出て来た。・・・ホントに怖かった。クスリを打たれたら終わりだと思っていたけど、攫った男たちは下っ端の人間だったのと、私をそこまで痛めつける必要が無かったのだろう。
洋服は破れ、髪はガムテープを剝がす時に切ったり千切れたりしたのでボロボロになってしまったけど助かった。
ガムテープで巻かれていたふくらはぎと太腿は鬱血していて、蹴り続けた足にもかなり数の青痣があった。それを見て杏寿郎はまた辛そうな顔をして、そっとジャケットを脱いで私にかけた。杏寿郎はもうずっと私を抱きしめたままでいてくれて「すまない。」と何度も謝る。
車は杏寿郎の自宅へ向かう。
広い敷地全てを高いグレーの塀で囲み、中にはモデルルームの様な平屋の大きな屋敷。至る所に監視カメラが付いていて、明らかに一般の住宅ではない雰囲気。
杏寿郎は駐車場に車を停めると、私を横抱きに抱えて中に入り、広いリビングの大きなソファにそっと下ろした。
私のボロボロの恰好を気の毒に思ったのだろう「こんなものしかないが・・・」と彼のTシャツとハーフパンツを貸してくれた。事務所の前で攫われた時に落としたスマホとバッグも回収してくれていたようで、すぐに渡された。