第21章 炎虎 【煉獄杏寿郎】4
次は前の2人だ。
ん?車のスピードが遅くなった。運転席の男たちが慌てている声がする。防音なのか内容は良く聞こえない。
杏寿郎の車か、後藤のパトカーか。
杏寿郎は私が攫われたのを見ていたはずだ。きっと追って来てくれている。
でも、そうでない場合もあるので、次の信号が赤になったらドアが開くか試して、開いたら飛び降りよう。このまま乗っていても利は無い。
・・・足のガムテープがなかなか取れない。取れないままなら頭を守りながら転がるしかない。
停まった。ドアの鍵を開けて取っ手を掴もうとした瞬間、大きな音がして窓ガラスがすべて割れた。
発砲されたかと思って伏せる。
眩しい。
「あや!」
杏寿郎の声。あぁ。来てくれたのは杏寿郎だ。
顔を上げたが、眩しくてよく見えない。目を細めて焦点を合わせていると、ドアが開いて杏寿郎が私の身体を抱えて車から出してくれた。私は杏寿郎の首にしがみ付く。そのまますぐにいつもの車に乗せられる。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえた。きっと後藤だ。乗っていた男たちは全て後部座席に入れられていたから、後藤が逮捕するだろう。男たちを雇った黒幕に辿り着けばいいが。