第21章 炎虎 【煉獄杏寿郎】4
私が警備会社に向かうと、事務室には後藤がいた。
行方不明の同僚は昨日の朝の報告メールは送ったという。夜の報告メールが無かったことと、機密の入ったスマホのパスコードが何回もエラーになって行方不明が発覚したそうだ。スマホのパスコードは二重に設定されている。どちらも一回でパスしないと本部に連絡が行き、ロックされる。スマホの位置は鬼舞辻組関係の事務所らしい。解析できる技術があればかなりマズイ。
さらに、最近杏寿郎や冨岡、伊黒の部下などを頻繁に襲う集団がいて今日も何人か殺されたという。監視カメラの画像では遺体が三つ投げ捨てられているのが発見された近くを不審な白いバンが通っている。
産屋敷組長の持病の悪化により、鬼舞辻組がその混乱に乗じて一気に取り込もうとしているのではという事だった。
私は今朝までの煉獄との事を後藤に全て報告した。体の関係を持ったことに苦い顔をしていたが、自分の意思だと言うと「上にはそれは報告しないが、ヤクザにのめり込むと辛いぞ。」と忠告された。
そして、この状況だとこのまま杏寿郎の近くにいた方が危険が少ないだろうという事になった。
画像にあった白いバンによく似た車が少し前から警備会社の前に停まっている。車に乗っているのは確認できただけで若い男が四人。何度も電話や買い出しなどで降りたり乗ったりしながらずっと何かを待っている。
狙いはきっと私だ。鬼舞辻組の人たちならスマホの機密が漏れている。もしも違う所からなら杏寿郎と親しいからといったところか。交番から警察官を呼んで職質をしに来てもらう話も出た。しかし、私の職場を知っているなら自宅もバレている。ならば自宅で1人の所を襲われるよりも、準備を整えて臨める今が良いという結論に至った。うまくいけば逮捕して話が聞ける。
このままでは埒が明かないので、とりあえず杏寿郎に今朝の謝罪のメッセージを送った。
「すぐに会いたい」との返信。好都合だ。しかもここまで迎えに来てくれるという。
バンの男たちが何かしてきたらきっと杏寿郎が動いてくれるはず。…もしも、杏寿郎が動けない様ならば後藤が来てくれるという。後藤は最新型のミニスタンガンを二つ持たせてくれた。極薄タイプのGPSも出してきたので、腰に貼る。
昨日、杏寿郎は私の時計にこっそり小さな機械を付けていた。この形状はGPSだ。杏寿郎は私の事を心配してくれているんだと思う。