第20章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】3
そっとベッドから抜け出して、脱がされた服を集めた。体のあちこちについている桜の花びらの様な跡を見て随分独占欲の強い虎だと苦笑する。まだ起きる気配のない虎の頬にちゅっとキスを落とす。
服を着ながら体中の跡を隠す。流石というかなんというか。ピンク色の花弁は服を着ると全て隠れた。
シャワーの前に外した腕時計を付けながら、スマホを探す。鞄に入れたままだった。
画面を見ると10件程の他愛ないメッセージ。
・・全て後藤からだ。
さっと血の気が引く。
このスマホには肝心な事は送られてこない。
これは何か緊急事態が起きたという合図だ。
帰って確認しなくては。
杏寿郎が「ここの朝ご飯は美味しいらしい。起きたら朝ご飯を一緒に食べよう」と嬉しそうに言っていたのが浮かんで、胸が痛んだが、「急に仕事の呼び出しが入った。ごめんなさい。この埋め合わせは必ずします。」と書き置きをしてホテルを出た。
朝の5時半だった。
家でスマホを確認すると、一緒に潜入任務を行っていた同僚が行方不明になっているため、あやの安否確認とこれからの打ち合わせがしたいとのことだった。
同僚が履いていた靴の片方とバッグは港のコンテナとコンテナの隙間に落ちていたそうだ。機密の入ったスマホも見つからないらしい。・・・これは多分、もう、おそらく・・・。
急いで着替えて事務所に行かなければ。