• テキストサイズ

桃紅柳緑【鬼滅の刃】【R18短編集】  

第20章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】3


杏寿郎はバスローブの腰ベルトを解いて袖を抜いた。ばさりと脱ぎ捨てる。

杏寿郎はあやの目を見つめながら少し体勢を変えて背を向ける。
杏寿郎の背中には一面、炎を纏った虎の刺青。肩から、腕、腰にかけて極彩色の蓮や桜、波。そして至る所で燃える炎。

杏寿郎は右肩越しにあやを見つめる。杏寿郎のその目は少し悲しい色をしていた。

トーンを落とした静かな声であやに問う。

「あや、墨を見るのは初めてか?」

背中の虎が睨んでくる。怯んだあやを笑っている様だった。ヤクザなのはもちろん最初から分かっていた。でも、この人に抱かれるという事の覚悟を問われた気がした。
あやは背中の虎の頭を指先で撫でながら「同じ瞳の色。」と呟く。「そうだ。その虎は俺だからな。」と杏寿郎が静かに答える。あやはちゅっと虎の眉間にキスをした。ちゅちゅと自分がされたようにキスを落としながら炎を辿って右の肩へ。あやは、自分の動きをじっと見つめる杏寿郎の瞳へ強い眼差しを向けて、背中に抱き付く。
「初めて見ましたが、美しいですね。」と微笑んで肩の花弁や炎にまた唇を寄せる。
いつもくるくると柔らかく動いていたあやの眦がきゅっと強くなったので杏寿郎は少し驚いた。
「怖くは無いか?」
「あなたが?虎が?」
「どっちもだ。」
あやは杏寿郎の右肩にキスをしながらその強い目のまま杏寿郎と目を合わせ「まさか」と微笑む。

杏寿郎はくるりと体の向きを変え、あやの腰に腕を回すとそのままベッドへ押し倒した。
これまで見せなかった杏寿郎の鋭い眼差しをあやに向ける。あやは煉獄杏寿郎がやっと本当の顔を見せてくれたと思った。信念の為に命を懸ける覚悟をした男の顔を。
その爛々と燃え盛る赫い瞳に見つめられるだけで腰から背中がぞわぞわしてくる。気を抜くと引きずり込まれそうな程猛る炎の虎。
杏寿郎のこの顔が一番好きかもしれないと思いながら、あやも強い目で見つめ返す。
「いい目だな、あや。俺に委ねてくれるのか?」
あやは返事の替わりにニコと笑う。そして自分から杏寿郎の唇に唇を重ねた。
あやの覚悟は決まった。
この虎の炎になら引きずり込まれたい。
いや、もう遅い。自分はすでに炎の中にいる。
/ 265ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp