第20章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】3
あやと知り合って、ひと月以上がが過ぎた。
最初のきっかけは本当に新しいホステス相手にただ欲を満たしたかっただけだったのだが、どんどんそうではなくなってきた。
最近に至っては、体の繋がりが無ければもっと長く一緒にいられるのではないかとさえ考え始めた自分がいる。
俺は随分あやに惚れてしまった。
これまでの俺は決まった子を好きになることは無く、好みのホステスを何人かキープしておいて、ごくたまにホテルに連れ込んで適当に欲を満たすだけだった。それだけではさすがに女性に申し訳ないと罪滅ぼしのプレゼントと食事だったのに、あやとはただのデートや食事が楽しかったのだ。
女性が好むような話題を見つけて気を使いながら話すのではなく、俺が本当に好きな事や楽しいと思うことをたくさん彼女には話した。彼女もそれを面白がってくれたし、尊重してくれた。それに、彼女が好きな事は俺にも興味深かった。
素人の子だったからかもしれないが、彼女を知れば知るほど大切にしないといけない様な気持ちになった。
セックス前提でない子どもの様なキスで十分幸せな気分になれた。
嫌われたくない余りになかなか体の関係に持っていけない。
最初は作ったような綺麗な笑顔だったのが、少しずつ自然な可愛い笑顔を見せてくれるようになってきたのも本当に嬉しかったんだ。
参った。俺と彼女は住む世界が違うのに離せなくなったらどうしようか。
高橋にふと聞いてみる。
「高橋。あの子は俺の為に岩下志麻になってくれると思うか?」
「・・・『極道の妻たち』ですか?渋いですね。・・・さぁ。女は男で変わりますからね。・・・いい加減抱いてみてはどうですか?化けるかも。・・それにしても・・杏寿郎さんらしくない。」
「う~ん。やはりそうか。」
「杏寿郎さん、あれから他の女とも会ってないんでしょ?」
「・・・・そうだ。彼女に操を立ててるんだ。他は綺麗に清算した。」
「はぁ。随分本気じゃないですか。クラブにあんなお金も使って。」
「あの子は直接大金を受け取ってくれないからな。給料としてあやに行く様にしたいんだ。タクシー代も未だに無理やり受け取らせている位だ。・・・ま、でも、・・・勝負は次だな。俺を知っても傍にいてくれるか・・・。」
「ヤクザと付き合える様な根性のある子だといいですね。」