第19章 炎虎 【煉獄杏寿郎】2
「君には驚かされてばかりだ。君はやはりホステスには向かないなぁ。こんなのは適当に買わせて質屋にでも持って行けばいいんだぞ。」
「それはあまりに失礼では・・。」
「・・・ホステスへのプレゼントとはそういうもんだと思っていたが。君は違うのか。・・・物では君の心は掴むことはできないんだな。こちらこそ大変失礼をした。では、作戦変更だ。デートをしよう。」
「デートですか?」
杏寿郎は軽く頷いた後にこっと笑ってあやを見る。
「・・・君、歌舞伎は好きか?俺は結構好きなんだ。」
「お恥ずかしいですが、観たことがないのです。」
「よし、ではちょっと待ってくれ。これからの演目が良ければ行ってみよう。」
杏寿郎はどこかに電話を始め、途中あやをちらと見るとまたニコっと微笑んだ。すぐに電話を切って「取れたぞ。行こう。」とあやの手を引いて歩き始める。
どこに電話を掛けたのだか、杏寿郎とあやが歌舞伎座に着くと奥の方から品の良い着物の女性が出てきた。
「いつもありがとうございます。」と微笑みながら前の方の良い席に案内してくれた。
杏寿郎が耳元で「今のは今日の役者の奥方だ『梨園の妻』というやつだぞ。」と囁いて、今日の演目についてあやに説明を始める。
2人は歌舞伎を見た後、イタリア料理を食べに行った。
杏寿郎が色々教えてくれたという事もあるが、あやの想像していた以上に歌舞伎は面白かった。
杏寿郎は美味しい料理を食べながら歌舞伎の話をたくさん聞かせてくれた。
出勤時間が近づいたので、そのままお店に同伴する。
一緒に一時間ほどシャンパンを飲んだ後、杏寿郎はあやの耳元に顔を寄せて「実はシャンパンの味の良し悪しも分からん。」と囁き、「さあ、夜のデートに行こう。」とまた前の様に店からあやを連れ出した。
後で聞いたことだが、杏寿郎はホステスであるあやを営業時間中に連れ出すために、まぁまぁの金額を払っていたらしい。