第19章 炎虎 【煉獄杏寿郎】2
約束した明後日
あやは、取り敢えず約束の百合の様な白いワンピースにジャケットを羽織って待ち合わせの場所に着いた。
銀座の一等地。買い物帰りの人たちが談笑しながら通り過ぎていく。東京に住んでいても自分にはあまり縁がない場所だなと思いながらあやはスマホの時刻を見る。
待ち合わせ時間は5時。食事をするには少し早い時間。
直ぐに黒いBMWが来て「待たせてすまない。」と言いながら杏寿郎が降りてくる。
チャコールグレーのスーツにライトブルーのクレリックシャツ、紺のソリッドネクタイ。
あやの目の前まで来ると、「ほら」と手を出してくるので、手を繋ぐ。すぐに歩き出し、あやの方を向いて微笑む。
「今日はまず君に、アクセサリーでもプレゼントしたいと思ってるんだ。」
と言い、待ち合わせ場所のすぐ近くにあるハリーウィンストンを指差して「ほら、あの店。俺はそんなに詳しくないが有名なんだろう?」と言う。
あやもあまりジュエリーに詳しくないが、何度も名前を聞いたことがある有名な高級ジュエリーショップ。ヤクザのお金でそんな物を買ってもらうわけにはいかない。と、あやは慌てて杏寿郎の手を引く。
「杏寿郎様。すみません。私アクセサリーはあまり興味がないのです。」
「では、時計はどうだ?使うだろう?あれなんか似合いそうだ。」
とショーケースを指差して言う。アクセサリー以上に時計は数百万からと高い。あんなダイヤがちりばめられている時計なんて一体いつ使うのか見当もつかない。お店に入ろうと歩を進めた杏寿郎の手をあやはもう一度引き、杏寿郎の顔を覗き込む。
「きょ・・杏寿郎様。ちょっと待って。そんな高級な物を買ってもらうわけにはいきません。」
杏寿郎はあやの言葉に眉根を寄せて困ったような顔をする。
「・・・俺は君に何か買ってやりたいんだ。」
機嫌を損ねない様に断るにはどうしようかとあやは困ってしまったが、一か八か甘える様な顔をして正直に言ってみる。
「お気持ちは大変嬉しく思いますが、杏寿郎様。私、欲しい物は自分で努力して買いたいんです。」
杏寿郎はその言葉に動きを止め、あやの顔をじっと見た後に「わははは」と笑った。