第18章 炎虎 【煉獄杏寿郎】1
そう言うと煉獄はボトルの近くにあった新しいブランデーグラスを「ブランデーは初めてか?」と問いながら持たせ、「はい」と返事をするあやをチラと見る。トクントクンと小さな音を立てながらブランデーを少し注ぐ。
「・・・ほら、グラスを傾けて香りを楽しんでから少しだけ口に含んでみるんだ。」
煉獄は口元に手をあてて、あやの反応を楽しむように見る。
あやはブランデー独特のアルコールとフルーツの合わさった甘く芳醇な香りを嗅ぎ、ほんの少し口に含む。ピリッと舌を刺すような強いお酒の味と口の中に広がる香り。こくんと飲み込むと、喉を走る熱い感覚が食道を通って胃に落ちてその後ボッと顔が熱くなった。
・・・大人の味すぎて反応に困る。
「どうだ?」
「・・・大人の味がしました。」
「・・美味しかったか?」
あやは、美味しさは分からなかったが、200万・・・と思いながら、一瞬返答に困る。が、煉獄の炎の様な瞳は全てを見透かしている様だったので、また正直に答える。
「・・・分かりません。すみません。」
途中から煉獄はもう肩を震わせて笑いながら聞いていたが、あやの方に顔を近づけると、耳元で囁く。微かにあやの鼻を掠めるブランデーの香りと、煉獄の纏う香水の甘い香り。
「安心してくれ。俺もブランデーの味は分からん。君が可愛くて少し揶揄ってしまった。俺の方こそすまない。」
あやはその言葉に驚いて煉獄の顔を見る。煉獄はにこっと微笑んで見返す。
「君は反応が正直でいいなぁ。ブランデーはナッツやチョコレートにも合うらしいぞ。何が一番合うか俺と一緒に試してみよう。」
そう言うと、煉獄は隣の席にいる高橋のグラスにもブランデーを注いだ後、ボーイに目配せをし「これの新しいものを兄の席に。このボトルはあっちの小芭内たちの席に運んでくれ。」と言い、ナッツなどのおつまみも一緒に頼んでいた。