第18章 炎虎 【煉獄杏寿郎】1
あやは仕事用のスマホから開いた資料を閉じると、飲み残した水をバッグに入れてジムに向かった。
ジムで軽く体を整えた後、エステで顔の状態も上げておいて今夜に備える。
8時のお店の開店に合わせてぞくぞくと組関係者が来店する。あやは入り口の前で穏やかな笑顔を作って出迎えながら、資料の写真で見た顔と名前を一致させていた。写真で見るとかなり凶悪に見えていたが、実際間近でみると意外と一般人とそう変わらないなと感じるのは写真の睨みつける様な表情と違って談笑している人が多いせいだろうか。
数名の若い衆を連れてお目当ての金髪とその側近が来た。煉獄は店の外に立つママと少し談笑した後、入り口をくぐる。あやはゆっくりと伏せていた瞳を上げて煉獄と目を合わせる。丁度良いタイミングでぱちりと目が合う。一瞬、杏寿郎が驚いた顔をしてわずかに目を見開いた。そして立ち止まる。
「・・・君が少し前に入った子だな。名を教えてくれ。」
「あやです。ご挨拶が遅くなってすみません。煉獄様、お会いできて光栄です。」
「これまでの子と少し毛色が違う新人が入ったと聞いていたからな。俺も会うのを楽しみにしていた。さぁ、俺の席へ案内してくれ。」
あやは、まず、最初の印象は悪くなさそうだと少し安堵しながら、一応ママの方をチラと見る。ママはにっこり笑って「行っていいよ」と合図をくれた。他のホステスの嫉妬に満ちた、刺すような視線を感じながら煉獄を奥の席へ案内する。煉獄はホステスの中で人気なのだ。
煉獄は席に着くとすぐに近くのボーイに「一番高いブランデーを持って来てくれ。」と言い、あやの方へ向くと、自分の隣の席をポンポンと叩きながら「おいで」と笑う。
あやもちょっとこの人もヤクザとしては他と毛色が違うなと思いながらにっこりと微笑み、「失礼します」と座る。
ちなみに、一番高いブランデーは1本200万程する。